球道雑記BACK NUMBER
なぜソフトボールからプロ野球へ?
日本ハムのルーキー大嶋匠の世界。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2011/12/20 10:30
ドラフト会議直後の大嶋匠。右手に大きなソフトボール、左手にプロ野球の硬球を握って、喜びのポーズ
鋭い反射神経を活かせる内野手へのコンバートも一案。
西詰監督が東芝野球部に在籍していた際、ソフトボールの選手たちと合同練習をすることが何度かあったという。
そこで西詰監督はソフトボールの選手の反射神経の良さに驚いた記憶がある。
「ソフトボールは塁間も狭いですし、内野のゴロも物凄い速さで飛んできます。東芝の選手たちもソフトボールの打球に挑戦したのですが、なかなか反応出来ませんでした。あれも慣れなんだと思いますが、ソフトボールの選手たちの反射神経はかなりのものだと思いますね」
ADVERTISEMENT
それであれば大嶋をファーストやサードへコンバートするのもひとつの手ではあるだろう。
「野球が下手」だからこそ「順応する力」が生きる。
以前、千葉ロッテでヘッドコーチを務める髙橋慶彦から、プロで大成する選手の条件として「野球が下手な選手」と説明してもらったことがある。
アマチュア時代からエリート街道を走ってきた選手よりも、裏街道を歩んできた選手の方がまだ選手としても完成しておらず、プロに入って指導者のアドバイスを素直に吸収して人一倍練習することが出来る、というのが理由だ。
その点でいえば大嶋にはまだまだ可能性を感じることが出来る。
西詰監督は言う。
「性格はとても素直ですし、(エリート街道を歩んできたような)野球経験者にありがちな癖もないです。彼の一番の武器は新しいものに順応する力じゃないでしょうか」
大嶋の挑戦をファンタジーで終わらせないために。
社会人のソフトボールではなく、あえてプロ野球に挑戦した大嶋。
彼の入団を受け入れた日本ハムも、これをただのファンタジーで終わらせないようにしなければならない。他競技からの挑戦を受け入れるからには、その競技に対する礼儀と責任も伴うからだ。
地域の関係で今現在、野球ではなくソフトボールをプレイする少年たちも数多く存在する。その少年たちにソフトボールからでもプロで一流の選手になれるんだと証明するためにも、大嶋匠の挑戦はもはや彼ひとりの夢の話だけでは終われない。
責任は本人が思っている以上に、重大なのだ。