球道雑記BACK NUMBER
なぜソフトボールからプロ野球へ?
日本ハムのルーキー大嶋匠の世界。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2011/12/20 10:30
ドラフト会議直後の大嶋匠。右手に大きなソフトボール、左手にプロ野球の硬球を握って、喜びのポーズ
社会人野球の練習でも柵越えを連発した規格外のパワー。
180cm、95kg、捕手、右投げ左打ち。その風貌はあの“ドカベン”を想起させる。焼肉食べ放題で肉を38人前平らげた事や、お菓子の「たけのこの里」が大好物という事まで「食」にまつわるエピソードには事欠かない。
「バッティングは力もありましたし、フリーバッティングでは柵越えも連発していましたよ」(西詰監督)
北海道日本ハムが彼を指名した理由もこの規格外のパワーに期待してというわけだ。
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今季の日本プロ野球は統一球の影響からか本塁打が激減した。埼玉西武の中村剛也だけがボールの影響は関係ないとばかりに48本の本塁打を放ったが、プロ野球の華とも言える本塁打の魅力が少なくなってしまったのはファンとしても寂しいかぎりだ。大嶋にはそこへの期待も高まる。
速球への対応力には目を見張る能力があるが……。
しかし、ソフトボールと硬式野球では根本的な違いが存在する。
野球では投手板から本塁までの距離が18.44mと定められているが、ソフトボールではマウンドがないばかりか投手板から本塁までの距離が14.02mと短い。この4.42mの差が大嶋を最初に苦しめることになるだろう。
まずバッティングだが、野球と違ってソフトボールはテイクバックをとることがほぼない。
ソフトボールの球速130キロの速球は、野球に置き換えると体感で160キロ近くにもなるため、ソフトボールではテイクバックをとらずにスイングしなければ間に合わないというわけだ。それでもボール自体がよく飛ぶ性質を持つので、打球はやたらに飛ぶ。
逆に野球は、テイクバックをとることでボールを手元へ引き込んで打つ。
「確かに速球に対する(大嶋選手の)対応は凄いです。プロに入ってもそこは早く順応出来るでしょう。けれど実戦では変化球とのコンビネーションでバッターは思うようにバットを振らせてもらえません。彼もそこで苦労するのではないでしょうか」(西詰監督)