日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
ザックが探し続ける遠藤の後継者。
ボランチの扇原貴宏は最有力候補!?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/12/01 11:20
アウェーのバーレーン戦、ホームのシリア戦ともに、存在感をシッカリ出していた扇原貴宏。欧州クラブのスカウト達も試合を見学に来ており、高い評価を与えていた
才能を感じさせる、ピッチ全体を見渡す視野の広さ。
視野もなかなか広い。
左サイドでボールを受けると、すぐに逆サイドの酒井を走らせるように右斜め前に速いパスを出すシーンもあった。全体がよく見えている、という印象も受けた。
相手のプレッシャーがあまり強くないなかでパスミスも多かったし、遠藤のようにタメをつくってから決定的なパスを送るというシーンもない。強調しておくが、まだまだ荒削りではある。ただ、これらを差し引いたとしてもスケールの大きさを感じ取ることはできた。
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得点につなげる判断力もいい。
前半45分の先制点は、キッカーの扇原が右CKでショートコーナーを使い、リターンを受けて送ったクロスで導いたもの。相手が集中力を欠いて、マークが甘くなっていたところを見逃さなかった。
「あのショートコーナーは相手に隙を感じたらやろうということになっていた。そう思ったのでやりました。ニアははね返されると思ったので、そこ(ニア)は越えようと思って蹴りました。セットプレーで決められれば楽になるので、大事にしようと思っていました」
今のA代表に足りない能力を持ち合わせているのは魅力的。
A代表の懸念材料となっているのが、遠藤保仁のバックアップ不在であることは言うまでもない。
その遠藤が出場しなかったアウェーの北朝鮮戦は、攻撃で目を引く場面がとぼしかった。ゲームを落ち着かせることもできず、ずるずると相手ペースに引き込まれてしまった。この状況から言っても、遠藤のバックアップとして置きたい「パサータイプ」のボランチを探しているザッケローニが、扇原に目をつけても何らおかしくはない。
守備的な要素が強い扇原は、遠藤とまったく同タイプとは言えないが共通点も少なくない。「ゆっくりすることも必要」とチームのリズムを変えたり、落ち着かせることのできる扇原の能力は、ザッケローニの目にも魅力的に映っているはずである。遠藤のレベルにはまだまだ及ばないが……。
今の日本代表に“不足”している点が、扇原にはいくつか備わっていることも興味深い。ひとつはレフティーという利点。ボランチ、最終ラインのレギュラークラスはほとんど右利きばかりで、左利きというだけでもプラスポイント。さらに「パサータイプ」「長身のボランチ」という点でも希少だ。それに加えて、セレッソ大阪でDF登録されている扇原はボランチと最終ラインをこなせるユーティリティー性もある。
今はボランチに定着しているため、最終ラインでどれだけできるか未知数な部分のほうが大きいものの、「ボランチ+最終ラインのユーティリティー」「左利き、長身」「パサー」の3点をセットで持つ選手は、そうそういるものではない。