フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
小塚崇彦と高橋大輔がNHK杯で激突!!
新旧の日本王者対決を制するのは?
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byTakuya Sugiyama/Atsushi Hashimoto
posted2011/11/10 10:30
過去GPシリーズで3回優勝している小塚(右)と6回優勝している高橋。昨シーズンは、小塚がGP中国とGPエリック杯を制し、高橋はGPスケートアメリカとGPNHK杯を制している
4回転の成功率は小塚有利、表現力なら高橋に軍配が。
大会によってジャッジの顔ぶれは違うし、出場する選手たちのできによってジャッジの出す点の勢いも微妙に変わってくる。だから、ではスケートアメリカに高橋が出ていたら優勝していたか、というと一概にそう決め付けることはできない。
過去2シーズンの4回転の成功率は、小塚のほうが高い。NHK杯までに小塚が4回転を調整してSP、フリーとも着実に決めたなら、若い彼のほうが優位に立つだろう。今季は特に、ジャッジは4回転をきめた選手に気前よく点を出している。カナダのフェルナンデスも、中国のソン・ナンも、フリーでは4回転を二度跳んで初のGPメダルを手にしたのである。
だが表現の部分の評価は、元世界王者である高橋のほうがまだかなり高い。フリーの5コンポーネンツでは、小塚はすべて7点台だが、高橋はすべて8点台を獲得し、およそ9ポイントの点差がある。この部分の評価は、大会ごとにそこまで急激に変わることはないので、小塚が高橋に立ち向かうためには、ジャンプでの失敗は許されないことになる。
実力派のライバルたちが新旧の日本王者を追い上げる。
今季の新プログラムを比べてみると、小塚のフリー、「ファンタジア・フォー・ナウシカ」は美しいピアノのメロディで、本人が好きで選んだというだけあり、音にのって端正に伸び伸びと滑っている。
一方高橋の「ブルース・フォー・クルック」は、大人のスケーターでないと滑れない渋い選択である。本人はまだ模索中であるというが、滑り込んだらこれまでの高橋とは違った味わいのある作品になるはずだ。
この二人のファイナル進出を賭けた戦い、さぞ見ごたえのある試合になることだろう。
だが言い忘れてはならないのは、どちらかが優勝するという前提でずっと書いてきたものの、他にもライバルはいるということだ。
元欧州王者のトマーシュ・ベルネルは、4回転と、高いスケーティング技術を兼ね備えた選手。試合の好不調が激しいが、潜在能力が高いだけに油断はできない。
またダークホース的存在は、米国のブランドン・ムロズだろう。まだ無名の若手ながら、この夏、フィギュアスケート史上初の4回転ルッツを米国内の小さな試合で成功させ、ISUに正式に承認された。他の技術は未熟だが、ムロズがもし本番で4回転を2回以上成功させたら、表彰台に上がってくる可能性も十分にある。
日本勢が気を引き締めて、良い戦いを見せてくれることを期待したい。