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ザック流の“マネジメント”とは?
日本代表に漂う独特の緊張感の正体。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/10/30 08:01
欧州視察に出たザッケローニ監督は、マジョルカの家長昭博に「もっと試合に出て、頑張って欲しい」と言い、試合出場が少ないケルンの槙野智章に対しては「絶対に出られないレベルじゃない。いつか絶対にチャンスが来るから油断しないように」と言葉をかけた
アルベルト・ザッケローニが2週間の欧州視察を終えて日本に戻ってきた。
指揮官が自分の目でチェックしてきたのは香川真司、槙野智章の現代表メンバーにとどまらず、最近代表に招集していない森本貴幸、乾貴士、家長昭博たちであった。
森本らを視察したのは何も11月に行なわれるタジキスタン、北朝鮮戦のアウェー2連戦での招集と直接つながるものではない。今後を見据えて「俺は変わらず君を見ている」というメッセージを送る意味もあれば、チームでの活動に専念している彼らの“その後”を把握する目的もあっただろう。森本たちはあらためてザッケローニから「見られている」ことを強く意識したに違いない。
「主力」と「控え」を区別せず、緊張感を常に保つマネジメント。
「外」(大枠のメンバー)の充実なくして、「中」(招集している現メンバー)の充実なし、「控え」の充実なくして「主力」の充実なし――。ここに来てザッケローニが自身のポリシーを具現化すべく、積極的なアクションに出ている感がある。
「外」にいる選手を中心に置く今回の欧州視察もさることながら、ベトナムとの親善試合がそのチームマネジメントにおける最初の大きなアクションだった。
ザッケローニはこの試合で、細貝萌、槙野智章、西川周作らこれまで1年間、継続的に招集してサブとして支えたメンバーを先発で起用した。細貝、槙野はザック体制となって初先発。W杯予選の前哨戦として用意された舞台であれば主力メンバーを並べてくるかと思いきや、彼は控えに置いてきた選手たちをピッチに立たせたのである。
代表に呼ばれ続けても使われなければ、控えにいる選手たちのモチベーションが低下してしまってもおかしくはない。ベトナム戦が控え選手をテストする千載一遇のチャンスであったのは確かだ。しかも、個々の“ガス抜き”という目的ではなく、毎試合、高いモチベーションを持って準備をしてきた彼らを起用することでチームに刺激を与えようとした、と言ったほうが正確かもしれない。
そもそもザッケローニは練習において「主力」と「控え」を区別しない。
フォーメーションを組んだとしても、メンバーを固定せずにいろいろな組み合わせでテストする。そのため選手たちからも「誰が先発で出るかは予想できないし、試合当日になってみないと分からない」との声を筆者もよく聞いてきた。結果的に控えに回ってきた細貝たちが常に先発でいけるよう心身の準備を怠ってこなかったのは、ザッケローニがそうさせてきたとも言える。