日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
ザック流の“マネジメント”とは?
日本代表に漂う独特の緊張感の正体。
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/10/30 08:01

欧州視察に出たザッケローニ監督は、マジョルカの家長昭博に「もっと試合に出て、頑張って欲しい」と言い、試合出場が少ないケルンの槙野智章に対しては「絶対に出られないレベルじゃない。いつか絶対にチャンスが来るから油断しないように」と言葉をかけた
極めて重要なW杯予選で控え選手を抜擢することの意味。
指揮官は次なるアクションとして、タジキスタン戦では9月に初招集したばかりのハーフナー・マイクを初先発させた。ベトナム戦での控え組の先発起用は「あるかもしれない」との予感はあったが、マイクの先発は筆者にとってまったくの予想外。マイクはベトナム戦で起用されなかったわけだし、ここ5戦連続で先発して結果を出している李忠成をこのタイミングで外すとは思えなかったからだ。
結果を残さなければならないW杯予選でザッケローニがマイクの先発起用に踏み切ることができたのも、控えの選手たちのモチベーションが今まで以上に高まり、チーム内が活性化した手ごたえを得たからだろう。それに加えて、使いたくなる雰囲気がマイクに漂っていたことが起用を後押ししたように思えてならない。結果は先制点を含む2ゴール。得点以上に攻撃陣の核として活躍を見せ、8-0の大勝劇に貢献した。
「誰が使われるか分からない」と全選手に感じさせておくこと。
後日、マイクからこんな話を聞いた。
「誰が使われるか分からないというのは、代表に入ってきて自分自身も感じていること。ひょっとしたら自分がベトナム戦に(先発で)出る可能性もあるんじゃないかと思っていましたから」
マイクはベトナム戦でも先発を意識して準備を整えていたが、結果的にはベンチスタートで出場機会もなかった。後半途中に指揮官から呼ばれたものの、交代予定ではなかった槙野が両足をつったために急遽、代わりに吉田麻也が出場。それでも彼は試合後「出られなかったのは残念ですけど、まあ仕方がないですよ」と明るく、前向きに捉えていたのが印象的だった。細貝や槙野たちが先発で起用されたこともあって“先発のチャンスはいつか必ず来る”との意識を、マイク自身も強めていたように感じる。
マイクが結果を残したことは控えの選手にとってこれ以上ない発奮材料となるのは間違いなく、これこそがザッケローニが狙ってきたところである。
最近のJリーグを見ても、代表で学んだプレーをチームで試そうとしている選手が多く目につく。たとえばベトナム戦、タジキスタン戦ともに出番のなかった増田誓志は天皇杯の筑波大戦では縦に速いパスを何度も送っていたし、代表では控えセンターバックの栗原勇蔵も浦和レッズ戦では最終ラインから攻撃につながるパスを意識していた。そして、時の人であるマイクも、相手を外しながらボールを受けるポストプレーに積極的にトライしているのが見てとれる。