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あの頃、日本は元気だった。
新橋・虎ノ門・浜松町は昭和の香り。 

text by

疋田智

疋田智Satoshi Hikita

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photograph bySatoshi Hikita

posted2010/03/19 06:00

あの頃、日本は元気だった。新橋・虎ノ門・浜松町は昭和の香り。<Number Web> photograph by Satoshi Hikita

汐留と新橋。ガラリと印象変わる隣町。

 さて、自転車で出発したのは浜離宮あたりだ。そこから築地方面に行かず、目の前に聳える超高層ビル群を「なんだなんだ」と真下まで確かめに行くと、そこが汐留。大型トラックが走り回る海岸通りとの交差点で、外堀通りの出発点でもある。

 汐留は昨今の開発地区にしては珍しく、実に自転車で走りにくい。目の前の交差点が渡れなかったりする。あまり「エコ」やら「コンパクトシティ」やらを考えているとは思えないんだな。未来都市的で、見た目は実に格好いいんだけどね。

 で、その非エコ系インテリジェントシティ・汐留を横目に通り過ぎると、すぐにくだんの新橋である。

 自転車で来てみると、汐留と新橋、この二つの街の差にはあらためて驚くぞ。別に境界線があるワケじゃないのに、汐留高層ビル群を背に、ペダル一漕ぎ、新橋エリアに入ると、そこは一気にガード下で、場外車券売り場(競輪の車券場売り場ですね)で、安居酒屋の昭和エリアとなる。

 こうした飲食店街の常として、昼間に出向くと、その古ぼけた飲食店街は、夜よりもさらにぼんやりと薄汚れて見える。

 パチンコ屋、飲み屋、牛丼屋、ラーメン屋、飲み屋、また飲み屋、パチンコ屋、金券屋、飲み屋、飲み屋……、と、そうしたラインナップが延々と軒を連ねてる。そこをゴミ出しの従業員たちがポリバケツを持ってひょこひょこと通り過ぎていく。

 何というのかな、街全体が、白シャツにステテコ姿で「おやー、もうお昼過ぎか、やれ、起きるとするか」とか言いながら、尻を掻きながら、欠伸しながら、むっくりと起きあがってきてる、という感じ。

経済学者も驚愕。ここは本当に「花の港区」か。

 店々の共通点を言うならば、いずれも「安い」ということだろう。不思議なのはそこの部分だ。

 新橋っていうのは、まがりなりにも花の港区である。調べてみれば分かるが、地価だってそれなりに高い。安居酒屋ばかりでは、地代に耐えられないはずなのに。

 それでも安値は譲れない。薄利多売なのか、チキンレース状態なのか、それとも何か秘策でもあるのか。以前、この町の居酒屋で、一橋の経済の教授と飲んだとき、教授が「君、この店は、この値段で成り立つのかね!?」と叫んだことがある。なぜか不思議に成り立つ。そういう街が新橋。

【次ページ】 街乗りに最適。折りたたみ自転車は14万円、チタン製。

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