濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
格闘技界を席巻するニューストリーム。
キーワードは「10代・女子・高校生」。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2011/08/30 10:30
Girls S-cup2011決勝戦。神村エリカ(18・写真右)は総合格闘家のハム・ソヒ(24)を相手に最後はパンチの応酬で打ち勝った。名実ともに最強の「現役女子高校生」格闘家である
数年前のこと、K-1の谷川貞治イベントプロデューサーが、スポーツ界におけるスター誕生の条件をシンプルに言い切ったことがある。それは「10代」と「女子」。いわく「スポーツ新聞で話題になるのは、その2つじゃないですか」。
確かに、ゴルフやフィギュアスケートなど10代、女子の選手が活躍することによって注目を集めたジャンルは少なくない。
今、格闘技界でも、この二つの条件を満たすファイターがメインストリームを形成しつつある。
「天才少女」たちが織り成すキックの宴。
一人は、いまや最も有名な現役格闘家といっても過言ではないシュートボクシングのRENA(今年、20歳の誕生日を迎えたが)。そしてもう一人が、RENAから4月のエキシビジョンマッチでダウンを奪ったキックボクサー・神村エリカである。
1992年12月30日生まれの18歳。中学時代から“天才少女”として注目され、すでにキック・ムエタイで3つのベルトを獲得している。さらに8月19日には、シュートボクシングの女子トーナメント『Girls S-cup 2011』(SHIBUYA-AX)優勝という勲章を付け加えた。
「このメンバーだったら私が優勝して当然」と豪語してトーナメントに乗り込んだ神村。一回戦は2ラウンド、準決勝にいたっては1ラウンド50秒で対戦相手をノックアウトし、決勝で韓国の総合格闘家ハム・ソヒと対峙した。
“ガラパゴスルール”が実現させたドリームカード。
神村とハム。まずはこの顔合わせ自体が興味深い。どちらも優勝候補と目されていたが、同時に二人ともシュートボクシングが“本職”ではないのだ。だがこの試合は、シュートボクシングでなければ実現しないものだった。
総合格闘技のリングには、神村は上がらない。キック出身だが現在は女子総合イベント『JEWELS』が主戦場になっているハムがキックボクシングで神村と闘うこともないだろう。
この決勝戦は、投げも関節技も認められるが、寝技はない“立ち技総合格闘技”シュートボクシング独自のルールがもたらしたドリームカードだったのだ。