濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
格闘技界を席巻するニューストリーム。
キーワードは「10代・女子・高校生」。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2011/08/30 10:30
Girls S-cup2011決勝戦。神村エリカ(18・写真右)は総合格闘家のハム・ソヒ(24)を相手に最後はパンチの応酬で打ち勝った。名実ともに最強の「現役女子高校生」格闘家である
キックボクシングではあり得ない関節技と投げ技の攻防。
試合そのものも、シュートボクシングらしさに満ち、なおかつ主導権が目まぐるしく入れ替わる掛け値なしの名勝負だった。
1ラウンド、神村が肩固めでポイントを奪取する。彼女に組み技の経験はないが、ムエタイの技術である首相撲を応用したのだ。“キックボクサーの絞め技”に、場内は騒然。
だが2ラウンド、ハムがポイントで逆転する。首投げ2連発で2ポイント奪取。この日、ハムは一回戦、準決勝ともフルラウンド闘っている。どちらも判定2-0の僅差。体力的には限界に近く、関係者が棄権も考える中で本人だけが「決勝もやる」と言って聞かなかったそうだ。それは、ここまで封印してきた投げという“奥の手”があったからかもしれない。
この失点で「一瞬、心が折れた」という神村だが、すぐに気持ちを入れ替えた。
「ぶっ倒すしかない、って思いました」
最終3ラウンド、神村は「ミドルキックから入れ」というセコンドの指示を無視して殴りにかかる。フォロースルーで自分の体勢が崩れるほど全力のフック。ハムも打ち返す。2階席にも骨と骨がぶつかり合う音が聞こえてきそうな打撃戦の中で、神村のパンチが当たった。ダウン。すなわち2ポイント。神村の再逆転だ。
少女を格闘家に変えた、“立ち技総合格闘技”という妙味。
判定3-0、ジャッジ2者が1ポイント差をつける接戦をものにして、神村は優勝を飾った。戦前のコメントを実現させたのだ。有言実行、強気の言葉とともにリングに上がり、試合でさらなるインパクトを残す神村の個性はこれ以上ないほどに光った。
絞め、投げ、打撃でポイントを奪い合うシュートボクシングならではの妙味。気力、体力を振り絞る迫力抜群の打ち合い。男子でもここまでできないだろうと思えるほどハイレベルな“立ち技総合格闘技”がそこにあった。
いや、この試合に“女子なのに”という表現はふさわしくない。“若いのに”という称え方も当てはまらない。性別も年齢も関係なく、リング上にはただ、最高の“格闘家”がいただけなのだ。