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26勝ペースで邁進するダルビッシュ。
効果的な援護が生む投打の好循環。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2011/07/25 12:10
今季は、歴代11位となる46イニング連続無失点記録のほか、パ・リーグ記録タイとなる3試合連続完封など、圧巻のピッチングを続けている
相手にダメージを与える、独自のピッチングスタイル。
「リードした後をしっかりと抑えられているから、相手からすればよりダメージを与えられるんじゃないですか」
相手にダメージを与えられる――。
この言葉が意味するもの。それは、打線が効果的に援護してくれることで、一層、ブレのない投球ができる、自分の投球を貫くことができる、ということになるのではないか。
この試合でも、ダルビッシュは自身のスタイルを全うした。
2回、先頭の山﨑武司に対し全球ツーシームを投じた結果、二塁打を許し、これが先制点へと繋がってしまった。3回からは一転、速球の割合を増やしたわけだが、「別に、山﨑さんに打たれたから変えたわけじゃないんで」と、彼はきっぱりと答えた。
「左バッターの対応を見てフォーシームのほうがいいと思ったし、途中からボールも良くなったのでフォーシームとスライダーでほとんど行きました。自分の場合、相手のタイミングが合わなければピッチングを変える必要はないし、合ってくれば変える。アプローチに変化を加えながらよりいいピッチングをしていくだけなんで」
味方が援護してくれる。今季はその意識が例年以上に強いからこそ、ダルビッシュは己の信念に基づき、序盤から確実にゲームを支配することができるのだろう。
力強い投球を支えるストイックなまでの肉体管理。
とはいえ、打線との相乗効果だけでなく、勝てる要因として、ダルビッシュ自身の変化も見逃せない。
それは体の強さ。本人も、勝てる要因のひとつに、「体が大きくなったからじゃないですか」と挙げ、梨田監督も「バージョンアップしましたからね」と認めているほどだ。
食事やサプリメントの摂取など、ダルビッシュの自己管理能力の高さは今や有名な話ではあるが、徹底したトレーニングで筋力面を強くしていることも、彼の力強い投球の大きな支えになっている。
先発ローテーションに定着した'06年以降、毎年、体重アップを心掛け、ストイックなまでに肉体を管理。85キロ前後から着実に筋力をアップさせ、昨年から今年にかけては一気に90から98キロに。さらに逞しい体へと変貌を遂げた。