ボクシングPRESSBACK NUMBER
内藤vs.亀田戦はココを見ろ!
序盤がカギを握る“静かなる決闘”。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKYODO
posted2009/11/27 10:30
内藤大助と亀田大毅が対戦した時には、「国民の期待」(内藤)、「負けたら切腹」(大毅)とリング外での激しい舌戦が繰り広げられたが、今回はほとんど無しということで……
「3回までに倒す」と宣言した亀田の勝機はどこにある?
対する亀田は、試合の発表会見の席で「3回までに倒す」と宣言している。これは単なるリップサービスではなく、作戦の一端を垣間見ることができる。
ある元世界王者は、内藤攻略の“参考書”として内藤をアウトスタイルで追い込んだ日本王者・清水智信の戦い方を挙げる。右構えの清水はスピードを活かしたアウトスタイルを得意とするボクサーで、内藤戦では左ジャブと右ストレートを軸に、インサイドからパンチを当ててポイントを稼いだ。フック主体の内藤には実に効果的だった。
「興毅選手はサウスポーなので清水選手と構えは違いますが、スピードがあります。足を使った戦い方としては参考になるはずです。出入りの激しいボクシングに、内藤選手はなかなかついていけなかった。あれに近い戦い方はできる。ただ、興毅選手は本来アウトボクサーではなく、リーチも短いから射程距離が長いわけではない。だから、アウトスタイルだけやっておけばいいというわけでもないんです。連続攻撃に迫力がありますから前に出てガンガン攻める部分と、足を使う部分をうまく織り交ぜて組み立てる必要がある。まず3回ぐらいまで前に出て攻めるのも面白いと思いますけどね」
亀田としても選択肢のひとつとしてこの考えがあるに違いない。つまり「3回までに倒すつもり」で初回から前に出て攻めていくことで、スロースターターの内藤の出鼻をくじくことを想定しているように思う。前にしっかり出るところと、内藤が警戒しているアウトボクシングを使うところ、その何パターンかが亀田の頭のなかに入っていることだろう。
両陣営とも真っ向勝負を望み、不気味なまでに静かな構え。
運命のゴングは29日。試合まで直前に迫りながらも、両者は不気味なほど落ち着いている。内藤が「油断していない」と挑発を避ければ、亀田による過激なパフォーマンスもない。両者が再び顔を合わせるはずだった予備検診では、「会うとテンションが上がってしまう」と亀田の希望によって検診の時間をずらしている。両陣営とも「万全」を強調しており、どちらかと言えばリング外の駆け引きの少ない世界戦になっているのが意外でもある。お互い、真っ向勝負を望んでいるゆえのことだろうか。
序盤にチャンスをつくれないとなれば亀田は苦しくなる。逆に内藤も序盤でリードを許してアウトスタイルに移行されると、ポイント勝負で追いつけない可能性が出てくる。KO決着にせよ、判定決着にせよ、序盤の戦い方が命運を分けそうだ。