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内藤vs.亀田戦はココを見ろ!
序盤がカギを握る“静かなる決闘”。 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byKYODO

posted2009/11/27 10:30

内藤vs.亀田戦はココを見ろ!序盤がカギを握る“静かなる決闘”。<Number Web> photograph by KYODO

内藤大助と亀田大毅が対戦した時には、「国民の期待」(内藤)、「負けたら切腹」(大毅)とリング外での激しい舌戦が繰り広げられたが、今回はほとんど無しということで……

 内藤大助と亀田興毅の“因縁マッチ”が間近に迫ってきた。

 ボクシング関係者や担当記者の勝敗予想をいくつか集めてみると、「内藤有利」の声が多い。だが、内藤の圧倒的有利だとは見ていないのが特徴的。

「どちらかというなら6-4で内藤」という予想が大半を占めていた。

 内藤の勝利を強く推せない予想の背景に、おそらく昨年から続く不安定な戦いぶりがある。日本王者の清水智信を迎えた3度目の防衛戦では相手のアウトボクシングに手を焼いてポイントでリードを許し(8回終了まで0-2)、10回に何とか逆転KO勝利を収めたほどだ。今年5月の熊朝忠戦でも主導権を握れず、6回に7年ぶりとなるダウンを奪われている。2、3、4ポイント差の判定で振り切ったとはいえ、ランク下位相手に薄氷の勝利だった。

 最近の内藤は相手のペースに引き込まれ、後手に回ってしまう印象が否めない。35歳となったことで肉体的な衰えを指摘する声もある。

 一方の亀田は評価を上げた2度目のランダエタ戦以降、3年も世界戦の大舞台を経験していない。内藤と比較する材料が乏しいながら、ランダエタとの再戦で実証したポテンシャルの高さが予想を“肉薄”させているのだろう。挑戦者の亀田がつけ入る隙は十分にあるというわけだ。

拮抗する両者の戦前予想。試合展開はどうなるのか?

 では一体、両者はどんな試合展開を望んでいるのだろうか。

 まずは内藤サイドから考えてみる。

 17日に行なわれた内藤の公開スパーには、亀田ジムの関係者もビデオカメラを持って視察に訪れていた。そんななかで内藤が所属する宮田ジムの宮田博行会長は「(相手は)多分足使ってくるから、動いてアウトボクシングして」とスパーリングパートナーに要求。プレスをかけてカウンターのタイミングを測る内藤にも「ダメだよ、全部見せちゃ」と誰にでも聞こえるような大声で指示を出している。

 駆け引きの材料になる公開練習の出来事を額面どおり受け取るわけではないのだが、亀田側に対して「アウト対策はできているよ」という牽制にはなった。ただ裏を返せば、アウトスタイルを警戒しているとも言える。

 内藤にしてみれば横への動きなど持ち味の変則スタイルを駆使して亀田のスピードを止めたうえで自分の距離に持ち込み、破壊力のある大きなフックを狙いたいところだ。しかし主導権を握れなかったとしても、内藤にはプロ13年のキャリアがある。高い授業料を支払わされた最近の苦戦も糧となっているはず。一進一退の攻防になれば、危機を抜け出す術を知っているのは何よりの強み。内藤は「倒したい」ではなく「勝ちたい」とあくまで防衛にこだわっている。ズルズルとアリ地獄のように引き込んで、キャリアの差を活かす展開も選択肢にあるだろう。

【次ページ】 「3回までに倒す」と宣言した亀田の勝機はどこにある?

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