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夏の甲子園「裏の主役」、
強豪校を支える「好捕手」たち。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byAkane Ohara

posted2009/07/19 08:00

夏の甲子園「裏の主役」、強豪校を支える「好捕手」たち。<Number Web> photograph by Akane Ohara

九州国際大付の河野元貴捕手(3年)。福岡大会の1回戦には地元ソフトバンクや阪神など10球団のスカウトが集結。二塁送球1.78秒の地肩の強さに加え、広角に打てる打撃も魅力である。

 今年の高校球界で特に注目されているのが、菊池雄星(花巻東)、今村猛(清峰)という左右の本格派投手が出現したことだ。菊池レベルの左腕になると、どこまで時代をさかのぼれば比肩しうる存在に行き当たるのか見当がつかないほどだ。この左右の超高校級投手が今年の「表の顔」であることは間違いない。それでは「裏の顔」は誰だろう、と自問して思い浮かんだのが、好捕手たちの存在である。ざっと名前を挙げていこう。

 羽鳥尊(常総学院)、小田太平(横浜)、中村亘佑(横浜商大高)、山下斐紹(習志野)、山岸裕介(遊学館)、鬼屋敷正人(近大高専)、加納由也(関大北陽)、小関翔太(東筑紫学園)、河野元貴(九州国際大付)、梅野隆太郎(福岡工大城東)……等々。

 小田と中村は2秒を切れば「強肩」と言われる、イニング間の投球練習時の二塁送球で度々1.8秒台を記録。河野は右投左打の利き腕と、強肩・強打のプレースタイルが阿部慎之助(巨人)を彷彿とさせる。その河野と福岡県内でしのぎを削る梅野はコンスタントに1.9秒台を記録する強肩と、里崎智也(ロッテ)を思わせるセンター方向への強打が持ち味、とそれぞれキャラが立っているところが頼もしい。

 今年は特に、福岡に好素材が集まっている。5月下旬に九州国際大付の河野を取材した際に、同県内の東筑紫学園、小関の話になった。河野は「彼とは友だちで、幼稚園も一緒なんです。バッティングもいいし、肩も強いですね」と褒めたのだが、すぐに「意識しているみたいで嫌ですね。やめましょう」と話題を打ち切った。ライバルの火花がバチバチと散ったのを見たような気がする。2人以外にも福岡工大城東には強打を誇るプロ注目の梅野、さらに同校の1年後輩に中谷将大という好捕手がいる。こういうライバル関係が河野や小関を大きくしているのだなと思った。

高卒の好捕手が輩出される理由とは。

 実は、昨年度も好捕手の存在がスポーツマスコミを賑わせていた。プロスカウトが注目していた有力選手では、中村悠平(福井商)はヤクルトへ入団し、杉山翔大(東総工)は早大に進学して早くも斎藤佑樹とバッテリーを組むほどの活躍を見せている。その前年も伊藤光(明徳義塾)はオリックス、中田祥多(鳴門工)は西武へ進み、伊藤は二軍とはいえ新人でチーム最多の43試合に出場している。

 ここ数年にわたり、好捕手が輩出されているのは、野村克也・楽天監督の存在もその理由のひとつに挙げられるかもしれない。

 楽天が敗れると、テレビや新聞で配球を例にして敗因を語る。また、3月9日のWBC第1ラウンドで韓国に敗れたときは「あれは配球がダメ。初球シュートで、またシュート。前の打席、シュートで打ち取っているんだから、内角は意識させられていた。外のスライダーでよかった」と、スポーツ紙上で城島健司の配球を批判した。これに城島が反発して、キューバ戦を勝ったあと「『野村ノート』で勉強したおかげ」と嫌みを返すと、野村は「もっと人間形成しないと」と苦言を呈した。こういうやりとりを日常的に見聞きすれば、高校球児の中にも配球に対する興味が自然と芽生えていくことだろう。

近大高専の鬼屋敷ら、捕手に注目の夏季大会。

 夏の都道府県大会では、まだ見ぬ好捕手をしっかり確認したいと計画している。その代表格が近大高専の鬼屋敷正人。5年制の高専に在籍しているため、「来春卒業見込みのない人間がドラフトで指名される資格があるのか」と、あるスポーツ紙が指摘したら、その翌日には「高専の3年生もドラフト対象に」と別のスポーツ紙が書くという具合に、彼を中心にしてスポーツマスコミ内で激しい議論が巻き起こるほど、注目を集める逸材だ。こういう熱さを見ると、「裏の顔」という言い方はちょっと失礼だったかもしれない。

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