プロ野球偏愛月報BACK NUMBER
センバツが待ちきれない。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byY.Koike/PHOTO KISHIMOTO
posted2007/03/02 00:00
高校野球の専門誌が続々と書店の棚を飾るようになった。センバツ出場校が先月末に決まり、そのデータがようやく集まってきたのだろう。『週刊ベースボール別冊号』(ベースボール・マガジン社)、『ホームラン』(日本スポーツ出版社)、『報知高校野球』(報知新聞社)、『輝け甲子園の星』(日刊スポーツ出版社)……。手元にあるだけでも4冊ある。高校野球ファンにとっては待ちに待った季節がようやくやって来た。
その大会の中心勢力がどこなのか、端的に示すのがカラーグラビア。前記4誌のうち『ホームラン』以外が中田翔(大阪桐蔭高・投手&外野手)を取り上げているので、センバツ大会が大阪桐蔭高を中心に展開すると予測できる。ちなみに『ホームラン』は個人ではなく報徳学園、高知高、仙台育英高を取り上げている。
これら4誌の記事も参考にしながら優勝争いを予想してみよう。僕が昨年秋の都道府県大会、地区大会、明治神宮大会で見たのは参加32校中23校。この経験も加味して第1勢力の4校を選出すると大阪桐蔭高(近畿大会準優勝)、高知高(明治神宮大会優勝)、報徳学園(明治神宮大会準優勝)、千葉経大付高(明治神宮大会4強)がまず思い浮かぶ。
大阪桐蔭高は投打で怪物ぶりを発揮している中田をはじめ、岡田雅利(捕手)、堀拓真(一塁手)、山口祥継(三塁手)、生島峰至(外野手)など多彩な人材を抱え、優勝候補と呼ぶにふさわしい。
この大阪桐蔭高を近畿大会の決勝で破ったのが報徳学園。2年生バッテリーの近田怜王(左腕)、糸井慎太朗(捕手)を中心にディフェンス面に安定感があり、攻撃陣は4番小杉直人(外野手)を筆頭に破壊力を秘める。大阪桐蔭高を破り、明治神宮大会では仙台育英高にコールド、千葉経大付高に5点差勝ちしているので、対抗というより大阪桐蔭高に対峙する両雄と形容したほうがいい。
高知高は近畿2校のような強さはない。ただ、ピンチを凌ぐ粘り、わずかな突破口を得点にする狡さで、四国大会、明治神宮大会を勝ち抜いてきた。国尾健人、森田将之の両投手が看板で、チーム防御率は2.03。仙台育英高、大阪桐蔭高、広陵高の1点台にくらべると平凡だが、打たれながらも最少失点に抑えていくというのが持ち味。春はこういうチームが力を発揮する。
千葉経大付高にはいわゆる“超高校級”はいない。しかし、じわじわ相手にプレッシャーをかけていく圧力は関東勢の中では最も強い。投手陣も丸佳浩を筆頭に安定感があり、昨年の甲子園メンバー5人が残っているので経験値も高い。西高東低の勢力図を塗り替える可能性を秘める、関東のファンには心強い存在である。
第2勢力の4校は、仙台育英高(東北大会優勝)、帝京高(東京大会優勝)、成田高(関東大会8強)、広陵高(中国大会優勝)が投手力上位で名前が挙がる。とくに佐藤由規(仙台育英高)、大田阿斗里(帝京高)、唐川侑己(成田高)の3人は146キロ以上のストレートを投げる本格派としてプロも食指を伸ばす超高校級。怪物・中田翔との対戦は全国の高校野球ファンが待ち望んでいる。
以上8校以外では機動力野球で九州大会を圧勝した熊本工、明治神宮大会4強の常葉菊川高が伏兵的存在になる。とくに楽しみなのが熊本工。藤村大介(遊撃手)、加久統之(二塁手&外野手)の1、2番は大げさでなく、これまでの甲子園大会史上でも上位の脚力を持っている。その迫力を是非堪能していただきたい。
センバツ大会が始まるのは3月23日。あと約1カ月である。