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ダフ屋と中国競泳陣。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2008/08/15 00:00

ダフ屋と中国競泳陣。<Number Web>

 9日に始まった競泳も後半戦に入ってきた。

 観客席は満員とはいかないものの、午前の決勝の部は7、8割が入り、競技全体の中ではまずまず入りのよい競技になっている。

 空席はあっても当日券はない。だからダフ屋の出番である。3日目くらいまでは個人でチケットを購入したもののいらなくなって売りにくるケースが多かったが、本職の姿が目立つようになってきた。

 14日の朝、入り口周辺にいた中国人のダフ屋に、持っていた競泳決勝のチケットの価格を聞いてみた。「4000元」と紙に記してくれた。約6万4000円である。定価が600元だから相当の吊り上げかただ。まあ、トリノ五輪のフィギュアスケート女子のチケットほどではないけれど。あのときは3つあるカテゴリーの中間の席が1枚1000〜1200ユーロで取引されていた。日本円にして約16〜19万円ほど。

 それはさておき、日本から観戦に訪れた人も、欧州からやってきた人も、お手上げの体だ。あきらめて去っていく。でも売れ残らない。中国の人々が購入するからだ。40枚の100元札を財布からぽんと出し、やりとりしているさまは迫力がある。中国のある層の人々は本当に裕福であることを実感する。

 ところで北京に来る前、なぜ競泳のチケットが人気を集めているのか理解できなかった。中国の競泳に強い選手がいないと思っていたからだ。

 90年代前半こそ国際大会で活躍する選手はたくさんいたが、大量のドーピングが発覚し、記録抹消などの処分を下された、その後は一部の例外を除き低迷してきた。ここ最近の国際大会でも実績はない。

 だから中国の人々が観に来てもそんなに楽しくないんじゃないか、マイケル・フェルプスが中国でもスターであるとは聞いたことがないし、なぜ殺到するのか不思議だったのだ。

 ところが現実は違った。

 14日を終えて、中国は金1、銀3、銅1の計5個を獲得している。メダル数ではアメリカ、オーストラリアに次ぐ3位だ。大躍進である。

 14日も女子バタフライ200mで1、2位を独占(しかも二人とも大幅な世界新記録)、女子4×200フリーリレーではオーストラリアとアメリカの2大競泳王国に割って入り、銀メダルを獲得した。

 女子バタフライ200mに出場し5位だった中西悠子は「あんなに速いタイムを出されては」とつぶやいた。気持ちは分かる。本来なら銅メダルだったのに、未知の中国選手2人が上にいたのだから。

 地元開催に向けて、すべての競技で強化してきたのは知っていた。それでも、恐るべきレベルの上がり方である。

 現場で知り合いの記者や競泳の専門家とも話したが、「いったいどうやったらこんなに速くなるんだろう」とみんな首をかしげている。

 どんな練習を積んでいるのか、育成の方法は……。秘密が知りたい。

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