EURO2004BACK NUMBER
準決勝・決勝展望
text by
西部謙司Kenji Nishibe
photograph byAFLO
posted2004/06/29 00:00
開催国ポルトガルは、メンタルの弱さを露呈して開幕戦を落としたが、その後は開き直ってロシア、スペイン、イングランドを下してベスト4。ホストカントリーの面目を保った。他の多くのチームがそうであるように、ポルトガルもベストメンバーを知らないまま大会に臨んでいた。フェリペ監督はメンバーの半分を入れ替え、最終的にイングランド戦でベストメンバーと戦い方を探り当てたといえる。
イングランド戦のヒーローとなったGKリカルド、DFは当初のパウロ・フェレイラに代わったミゲルが右サイド。かつてのテュラム(フランス)のような存在感を示しつつある。センターは2戦目以来不動のリカルド・カルバーリョ、アンドラーデの絶好調コンビ。左は安定のヌノ・バレンテ。中盤はFCポルトのトリオ(コスチーニャ、マニシェ、デコ)、3人の役割分担と相互補完は2シーズンで培った年季である。トップにヌノ・ゴメス、そしてウイングにロナウド、フィーゴ。
戦法は“カミカゼ・アタック”。ウイングプレーヤーは1対1になったら必ず抜きにかかる。フィーゴ、ロナウド、デコはとにかく勝負。サイドバックもサポート。奪われたら文字通り全力で相手をマークし、プレッシャーをかけ続ける。超人的なスタミナと集中力が要求される戦法だ。ベテランのフィーゴでなくてもガス欠になる。しかし、そのときは豊富な交代要員を投入する。攻めるときはシモン、ルイ・コスタ、ポスティガ。守るならペチート、コウトなど。開幕ではスタメンだった選手たちが、サブとして決定的な働きをしているのもムードを盛り上げている。
このポルトガルと当たるオランダも両ウイングを置いた4−3−3。こちらも緒戦はファンデルファールトを使った4−2−3−1だったが、「選手はこれに慣れている」(アドフォカート監督)という理由で次第に4−3−3に固まってきた。オランダの強みは、ファンニステルローイがいること。単独で中央を任されているので当然厳しくマークされるが、それでもゴールをこじ開けられる高さ、強さ、上手さを持っている。オフェルマルス、ファンデルファールト、シュナイデル、マカーイと、ポルトガルに負けず攻めのサブメンバーは充実している。ただし、すでにトップギアに入ったポルトガルと比べると、まだエンジン全開とは言い難い。勢いでややポルトガル有利か。
今大会の“驚き”となったギリシャ。相手のキーマンを徹底したマンマークで押さえ込み、右サイドに位置するカリステアスの高さを生かしたロングボールでカウンターを仕掛けるなど、ベテラン監督レーハーゲルの采配が当たっている。パスワークで崩しきれるほどではないが、中盤のキープ力もある。UEFA技術委員のロクスバーグが「参加チームの半分に優勝のチャンスがある」と言った実力拮抗のユーロだが、ギリシャはそれを象徴する存在となった。開幕戦のリベンジを期すポルトガル人は、ギリシャの決勝進出を望んでいるようだ。
4連勝でベスト4へ進出したチェコは、ここまで理想的な勝ち上がり。3試合目のドイツ戦で主力を休ませ、準々決勝のデンマーク戦はじっくりと相手の出方を見ながら一瞬の隙をついて3ゴール。体力的な消耗も少ない。FWバロシュが大当たり。思い返せば、バロシュとコラーの2トップが定着したのは日本との親善試合だった。日本戦の3−5−2のテストは上手くいかなかったが、予選での1トップを変えたのはそれだけバロシュが好調だったからだろう。
ブリュックナー監督の采配の妙と、4−4−2を基調にしながらも3−5−2、4−5−1を自在に使いこなせる柔軟性、手慣れたコンビネーション。最も充実したチームであるチェコには死角が見当たらない。力量からいって、ギリシャには勝ちそうだ。
決勝はポルトガル対チェコ。しかし、ポルトガル対ギリシャ、オランダ対チェコという因縁対決になっても面白い。