荒川祐輔メジャー挑戦記BACK NUMBER
インストラクションリーグの生活
text by
荒川祐輔Yusuke Arakawa
photograph byYusuke Arakawa
posted2004/10/28 00:00
マイナーリーグのシーズンが9月6日に終わって、オフに入っていると思われがちですが、シーズンが終わったら、もう次のシーズンに向けて選手も球団も準備をしなくてはいけません。その一つとして、シーズン終了後に、今回僕も参加しているインストラクションリーグというものがあります。今回はその「インストラクションリーグ」について皆さんにお伝えしたいと思います。
そもそもインストラクションリーグとはどういうものかというと、日本でいう秋季キャンプや秋の教育リーグのようなものです。しかしインストラクションリーグは、全球団が行うわけではなく、やらない球団もあります。日本の秋季キャンプは全球団やるのが当たり前ですが、アメリカの場合はそうではないのです。また、日本の秋季キャンプは、二軍の選手は基本的に全員参加だと思いますが、インストラクションリーグは、ルーキー、ショートシーズンA、LOW−A、HIGH−A、ときにはAAのレベルの選手の中から指名された、50人ほどの選手だけが集まって、練習や試合をします。だから、日本のように一軍の選手以外は全員このプログラムに参加できる、とは限らないのです。
このインストラクションリーグには、球団GM、メジャーの監督、マイナーを統括している代表、マイナーコーディネーターと呼ばれるコーチ、それとマイナー各レベルの監督・コーチなど、総勢20名ほどのスタッフも来ます。ただしメジャーの監督は、メジャーのチームがまだシーズン中なので、全期間いるわけではありませんが。それでも何日かはインストラクションリーグに参加している選手を見るためにやって来るのです。
つまり裏を返せば、このインストラクションリーグというものがかなり重要なものだということですね。メジャーの監督や球団GMが来るぐらいですから。ここでアピールすることによって来年スタートするチームのレベルや、自分の評価・方向性が変わってくるかもしれないのです。
インストラクションリーグで行うことは、全体的に見れば春季キャンプとあまり変わりません、ただ、春季キャンプのときは選手が200人ぐらいいるのに対し、インストラクションリーグは50人前後なので、とても内容の濃い練習になります。コーチの指導も、より綿密に受けられます。個人面談があり、自分がメジャーに行くために何が不足しているかが洗い出され、それを達成するためのプロセスなども話し合います。選手たちは、このインストラクションリーグの期間中に少しでも足りないものを補えるように、練習するのです。
練習前にはミーティングがあり、チームが望む選手像について話があったり、試合での様々なシチュエーションに対する動き、野球のルール、投手の配球、試合での各個人の評価などを、一時間ぐらい、事細かく話したりもします。グラウンドに出ると、練習内容はすべて時間で区切られています。通常は、3時間ぐらいの練習をした後に試合をする感じですね。
試合がなければ14時ごろに全体練習が終わり、後は自分の好きな練習をします。投手は基本的にウエイトトレーニング、野手は打ち込みなんかもしていますね。逆に試合があるときは、時間も遅くなるのでみんな自主練習をせずにホテルに帰り、自由時間を過ごします。ほとんどの選手は疲れていますし、次の日は朝早いので、早い時間から寝てしまいます。ところが、英語圏外の国から来ていて英語が苦手な選手は、このあとさらに英語のクラスがあるのです。僕もまだまだ英語が駄目なので、30分ほどの授業を受けているんです。こんな感じで毎日が過ぎていき、インストラクションリーグの期間中、休みはたった一日だけです。
この他、マイナーリーグの選手がシーズン後に参加できるものとしては、一球団あたり4〜5人の選手を全球団から集め、6週間にわたって試合をするアリゾナフォールリーグや、中南米の各国で行われるウインターリーグがあります。どの選手も、メジャーに上がることを目指してこういった機会を利用し、自分の技術を磨きます。
しかし、こうしたリーグすべてをあわせても、マイナー全選手がプレーできるわけではありません。選ばれた選手だけがプレーできるわけです。ですから、選ばれるだけでも大変なことであり、光栄なことなのです。特にアリゾナフォールリーグは、これからメジャーで活躍すると期待されている、AA以上の若手選手が球団から選出されます。位置づけとしては、このフォールリーグの下にインストラクションリーグがある、と言えるのではないでしょうか。
インストラクションリーグに参加して、チームが自分に求めていることがわかり、これからしなくてはいけないことが、明確になりました。これを生かして、来年のステップアップにつなげていきたいと思います。