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ドジャーズを支えた、幾多のジンクス 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGettyimages/AFLO

posted2004/10/25 00:00

ドジャーズを支えた、幾多のジンクス<Number Web> photograph by Gettyimages/AFLO

 ポストシーズン真っ只中のメジャーリーグだが、ここLA地域に関する限り、すでに野球シーズンは終わってしまった感がある。以前にも紹介したが、新オーナーのもと、ドジャーズ、エンジェルスによる“地元チーム”の座を賭けた覇権争いが繰り広げられ、何とLA始まった以来の両チームが地区優勝を決める快挙が起こった。しかし揃ってディビジョン・シリーズで敗退。争いの行く末は来シーズン以降に持ち越しとなった。

 個人的にもドジャーズとともに野球シーズンを終えたのだが、今年ほどドジャーズ一色に偏った取材活動をしたことはない。実は、今年から取材した試合をメモ帳に記すようにしていたのだが、何気なく数え上げてみたらオープン戦、公式戦、さらにプレーオフを合わせ全121試合。地元のドジャーズ番記者並の試合数になっていた。その分、今シーズンのドジャーズの悲喜交々も見てこられたように思う。そこで今回はドジャーズのジンクスに関するシーズン裏話を紹介してみたい。

 勝負の世界に身を置くのは日米野球界共通。やはりメジャーでもジンクスは大切なもののようだ。開幕当初からドジャーズを席巻したのがウィリマム・ハンだった。

 ハンとは米国のアイドル発掘番組に登場した中国系アメリカ人。とてつもない音痴な歌唱力が逆に人気を博し、数々のヒット曲をカバーしCDデビューを果たした有名人だ。このCDをショーン・グリーンがロッカールームに持ち込んだところ、選手たちに大受け。試合に勝った後は、ロッカールームにハンが歌うR・ケリーの『I believe I can Fly』が流されるようになった。試合後の監督会見にも、この下手くそな歌が聞こえてくるため、記者たちが笑いをこらえるのに苦労させられた。そしてチームも開幕から快進撃を繰り広げた。

 ハン信仰はこれだけにとどまらない。ある日の試合中に野茂投手(らしい)がベンチの中で体長20?ほどのトカゲを発見。大騒ぎとなったが、誰かが「こいつはハンだ」と発言。そのトカゲを“ハン”と名付け、ロッカールームで飼い出してしまった。しかし5月中旬あたりから連敗が続くようになると、ハン信仰は一気に下火。いつの間にかロッカールームからハンは消えていた。

 また開幕当初から初回と6回に得点機を迎えて勝つパターンが多かったため、1回と6回の攻撃が始まる前、球場に流れる音楽に合わせてベンチにいる選手全員が手拍子をするようになっていた。これはシーズン最後まで続いた選手内の決まり事になっていた。

 もっと些細なことだが、選手たちの世話をするトレーナーの人たちの間でもいといろいろなジンクスがあったようだ。ベンチには飲料タンクが2つ置かれ、中には水とスポーツ・ドリンクが入っていた。これを準備するのが彼らなのだが、勝っているときはスポーツ・ドリンクの味を変えないのが決まり。しかし一度負けると味を変え、さらには水とスポーツ・ドリンクの位置を入れ替えたりした。

 さらにインターンを含めて4人いるトレーナーは試合中全員がお揃いの服装に統一しているのだが、これも勝っている間は同じ組み合わせを着続けた。ある日の試合では、1人の洗濯で“勝ち”衣装が間に合わず、別のものを着たところ、石井投手が負けてしまったらしい。

 さらに石井投手といえば、7月7日のダイヤモンドバックス戦で1安打完封と、あわや初の無安打無得点試合の快投を演じた。この時唯一ヒットを許したのが5回だったのだが、「5回だけコルボーンがベンチの座る位置を変えたんです」と石井投手が憮然とし、ドジャーズに限らずメジャーでは先発投手が無安打の間は選手全員がベンチに居場所を変えないということが明らかになった。

 ここに紹介したのはあくまでごく一部。チームだけでなく選手たちも選手たちの様々なジンクスを持っている場合が多い。そういった類のことを調査するのも、取材の楽しみといっていい。

 最後に、今シーズン様々な情報を提供してくれた日本人トレーナーの深沢さんと中島君には、本当にお世話になった。この場を借りて感謝の意を伝えたい。

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