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12球団ドラフト採点
<セ・リーグ編>
text by
小関順二Junji Koseki
posted2008/11/07 00:00
<セ・リーグ編>
去る10月30日に行われたドラフト会議で成功した球団はどこなのか、思い通りいかなかった球団はどこなのか、理由を探りながら採点していくことにする。
◇読売ジャイアンツ80点
ドラフト会議を生中継したスカイ・Aで、「巨人は王様のような指名をした」と話した。盤石の戦力に加え、若手の逸材が次々とファームから輩出されたことにより、今の巨人は即戦力を必要としない。そういう巨人の並々ならぬ自信が1〜5位までオール高校生の指名には見え、「王様のような指名」と表現した。
1位の大田泰示(東海大相模・遊撃手)をはじめとする面々は、いずれも0か100かという未完の大器ばかり。そんな中で4位の橋本到(仙台育英・外野手)は早い時期での一軍昇格がありそう。脚力と守備力にかけては天下一品、というのがその理由だ。原辰徳監督、伊原春樹ヘッドコーチの野球は機動力とディフェンス重視。この2人の体制が続く限り、「橋本的」な選手は重宝される。
◇阪神タイガース50点
低い評価の最大の理由は1位抽選を2度外したことと、入札した選手が松本啓二朗(早大・外野手→横浜と重複)、藤原紘通(NTT西日本・左投手→楽天と重複)、蕭一傑(奈良産業大・右投手→単独指名)と、守備位置もタイプ(個性)もまったく異なるためだ。
指名に一貫性がないということは、ドラフトに戦略的な視野がないというのと同じことだ。自分の球団はどういう選手を求めているのか、編成トップはわかっていないと思う。ちなみに、阪神は先発投手がほしいのに、外れ外れ1位指名の蕭は指名後の取材で「短いイニングのほうがベストを出せるし、最終的な夢はクローザー」とコメントしている。このチグハグさは見過ごすことができない。
◇中日ドラゴンズ90点
きちんと弱点補強をしているのが高得点の理由だ。退団が決まったウッズ(一塁手)の後釜に三塁守備に不安のある中村紀洋を充て、三塁には森野将彦が外野からコンバートする。そうすると、外野の1ポジション(中堅手)がぽっかり空くので、そこに1位で指名した野本圭(日本通運・外野手)を持ってこようと戦略。阪神にはない将来展望が、中日の指名からはしっかりと伝わってくる。
スカウトが1位に強く推したのは巨人が交渉権を獲得した大田泰示。それに対して落合博満監督は即戦力候補・野本の1位指名に固執した。ドラフト前に突然人気者になった大田にくらべ、社会人の野本は地味な存在だが、今年に入ってからの充実度は大田の成長曲線を上回っている。守備もいいので、穴が空いているセンターは十分任せられると思う。
◇広島カープ75点
相思相愛の岩本貴裕(亜大・外野手)は大学野球の最高峰、東都大学リーグで通算16本塁打を放ったスラッガーである。さらに、亜大のキャッチフレーズ「全力疾走」を不徹底ながら実践しており、広島のチームカラーと合致する。ただ、1年目からの即戦力か、と聞かれれば首を傾げる。それはボールを捉えるタイミングを完全にモノにできていないからだ。今の岩本は素質のよさだけでボールを打っている段階。1年目はかなり苦労すると見ている。
2位の中田廉(広陵・投手)は今夏の甲子園でストレートが大会ナンバーワンとなる148キロを記録して注目された本格派右腕。左肩の開きが早く細かなコントロールに難があり、右打者の内角に腕を振って投げ込めないという弱みはあるが、高校卒は5年くらいのスパンで成長を見守るというのがプロの基本的なスタンス。高校卒の前田健太、大竹寛を入団2、3年目に主力にした広島にとって、中田の本格化はそれほどの難事業ではないだろう。
◇ヤクルトスワローズ65点
1位の赤川克紀(宮崎商)、2位の八木亮祐(享栄)、4位の日高亮(日本文理大付)はともに高校球界を代表する本格派左腕だが、石川雅規、村中恭兵という主力左腕がいて、実績こそ乏しいが期待されている加藤幹典、高井雄平、丸山貴史という若手左腕もいる現状を見れば、左腕にこだわりすぎたと思う。
補強が急務な捕手は3位・中村悠平(福井商)、5位・新田玄気(パナソニック)を指名している。川本良平、福川将和、米野智人の既存戦力に決定力がないから「補強が急務」と言ったわけだが、2人の新人が早い時期に彼らを上回ることができるのかと言われれば首を傾げざるを得ない。競合覚悟で大野奨太を1位指名するくらいの冒険心があっていいと思った。
◇横浜ベイスターズ60点
投手不足は誰の目にも明らか。シーズン中に真田裕貴(巨人)、石井裕也(中日)の2投手をトレードで獲得し、代わりに鶴岡一成(捕手)、小池正晃(外野手)を交換要員で放出した。そして、2人の放出によって生じた穴を松本啓二朗(早大・外野手)、細山田武史(早大・捕手)で埋めようとしたのが今回のドラフトである。これは非常に不可解で理解に苦しむ。1位・松本はリーグ通算105安打、ベストナイン5回、4位・細山田はベストナイン4回受賞という一級の実績を残している。東京六大学、東都大学リーグで傑出した成績を残した選手はプロに進んでも成功の確率が高いというデータは横浜球団には心強いだろう。それでも低い得点にしたのはあくまでも戦略的な物足りなさのためである。