青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
鳩山首相も手放しで賞賛する、
石川遼の驚異の「コメント力」。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKYODO
posted2010/01/23 08:00
鳩山首相にパターを手渡しした石川遼。「アドレスがきれいですね」と言われた鳩山首相は「たまには褒められるのもいいな」と笑った
アマチュア時代から培われてきたコメント力。
ダイナミックなプレーやさわやかなルックスに加えて、このコメント力が石川のイメージや人気を作ってきた部分も大きい。オフのイベントで他競技の選手と会った時などは、18歳とは思えない受け答えがいつも驚きと称賛の対象になっているからだ。
そのコメント力はゴルファーだからこそ培われてきた部分もある。
子どもの頃、石川は父に付き添われることなく、大人達の中に放り込まれてラウンドをしていた。彼らに気に入ってもらえれば、また自分がラウンドできるチャンスが増える。嫌われればおしまい。だからこそ、周囲の意図や空気を読む能力が自然と高まった。
また、ゴルファーはツアーで優勝すれば、閉会式で必ずスピーチを求められる。主催者やスポンサー、ボランティアへの感謝を述べた上で、自分の気持ちを語るのがお決まりのパターン。ジュニアの大会でも優勝時にそうしたあいさつをする機会は多い。自分がスピーチしたり、他の選手の言葉を聞くことで、話し方を学ぶ機会というのも多かったはずだ。
もちろんゴルファーが皆、石川のように話せるわけでないことを考えれば、本人の素養も大きく影響しているのは間違いない。
普段の取材においては、テレビと新聞と雑誌で微妙に言葉を変化させたりもする。『テレビカメラの前でだけいい人』というような態度の違いではなく、テレビなら総論的に、新聞ならディティールを、専門誌なら技術論を、とメディア別に変化をつけるのだ。石川はアマチュア時代からそうした技術を自然と使いこなして取材に応じていた。
人を惹きつける言葉を持つことは一流プレーヤーの証である。
昨年のある大会ではこんなこともあった。開幕前の会見でマイクを使わずにしゃべっていたら、途中で場内アナウンスが入った。すると誰に言われるでもなく目の前のマイクを手に取って話し始めたのである。後方の記者には聞こえづらいだろうという配慮だった。
細かなことではあるが、自分の言葉をしっかり相手に届けようという意志があるからこそ、そうした気配りができる。プレーだけでなく、インタビューもおざなりにはしない。だからこそ、石川のコメント力は日々の取材を通じてますます磨かれている。
プレーにも言葉にも注目すべき点がある。目で見て楽しみ、耳で聞いても楽しい。それもまた一流プレーヤーの証だろう。