青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
鳩山首相も手放しで賞賛する、
石川遼の驚異の「コメント力」。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKYODO
posted2010/01/23 08:00
鳩山首相にパターを手渡しした石川遼。「アドレスがきれいですね」と言われた鳩山首相は「たまには褒められるのもいいな」と笑った
手練れの政治家を相手にする官邸担当記者たちがうなっていた。
「あれだけ話せる政治家は見たことないぞ」
「恐るべき18歳だ」
彼らをうならせたのは石川遼である。
昨年の12月25日、石川は日本プロスポーツ大賞の総理大臣賞授与式のために首相官邸に足を運んだ。会議室で行われた式を終えると、外で待ち構えていた報道陣に囲まれた。
マイクを向けてきたのは普段見慣れたゴルフ担当とは違う政治部の記者たち。
鳩山由紀夫首相が前日に偽装献金問題の釈明会見を開いたばかりとあって、記者たちの思惑が透けて見えるような答えづらい質問も多かった。
「僕は自分の気持ちを貫くけど、総理の場合はまったく違うと思う」
しかし、まだ参政権も持たない高校生が、なんともさわやかにこの場をしのぎきってしまったのだった。
それはこんなやり取り。
――新政権のどこに注目してますか?
「僕から見て一番インパクトが強かったのは事業仕分けの開放感。今までも行われてきたことだと思うんですけど、それがオープンになったってことは、1人の国民としてすごくビックリして、思い切ったことをしていただいたなと。この1年間で一番うれしかったというか、清々しい気持ちになった場面でした」
――総理は今、ボールがハザードにある状態なんですけど。
「本当ですか!? 僕はフェアウエーにあると思いますけど」
きな臭い話になってきたと感じたのか、官邸のスタッフが「そろそろでお願いします」とせかす。質問は続く。
――首相がハザードから脱出するにはどうしたらいいですか?
「僕もボールを曲げて林に入るといろんな声が聞こえてきます。『狙え!』とか『安全に横に出せ』とか。僕は自分の気持ちを貫くけど、総理の場合はまったく違うと思うんですよね。ゴルフは自分のボールを自分で責任をもって自分だけで打っていきますけど、総理の場合は色々な意見を踏まえつつ結論を出さないといけない。ゴルフとはまったく違うと思うので、なかなか難しいんだと思います」
さすがにここまで言われると記者達も二の句を継げない。
事業仕分けを「清々しい」と表現してしまう感覚にも驚かされるが、最後の回答はゴルフの例えを引き継ぎながら、質問にきちんと答えつつ、首相のフォローもするナイスコメント。直前の首相との懇談では「日頃のインタビューの受け答えが素晴らしい」と褒められていた通りに、コメント力の高さを存分に示してくれた。