日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
コンセプトに縛られ敗れた日本代表。
岡田武史の負けじ魂は消えたのか?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byToshiya Kondo
posted2010/02/15 15:30
「全然闘えていない。こんな気持ちじゃダメだよ、気持ちで上回ってないよ」
球際でことごとく敗れてしまう光景をスタンドから眺めていたある日本代表OBは、もどかしそうにつぶやくしかなかった。
ライバル韓国とのホーム試合に岡田ジャパンは敗れた。それもW杯本大会で躍進する夢が打ち砕かれてしまうような完敗劇だった。伝統の日韓戦で3失点して敗れたのは'94年10月のアジア大会(広島)以来のこと。'00年以降に限ればスコアは○1-0、△0-0、△1-1、●0-1の4通りしかない。敗北は許されないという激しいライバル意識が、結果的にこれまでのロースコアを生んできたのだ。闘莉王の退場や大久保嘉人の負傷交代という予期せぬ事態はあったにせよ、ライバルの韓国に3点を献上して完敗したという事実は決して軽くはない。
58.7%という高いボール保持率が勝利に結び付かない。
コンセプトにこだわりすぎたことが、韓国戦では裏目に出てしまった。しっかりビルドアップしてパスをつないで連動して崩す「パス&ムーブ」も、シュートまでつながっていかなければ意味を持たない。58.7%のボール保持率は、ゲームを支配していたわけではなく、あくまでボールを持たされていたという印象でしかない。
クサビのパスや攻撃のテンポを上げるパスが狙われ、ことごとくつぶされた。裏への飛び出しが徹底的にガードされてパスコースに窮してしまえば、セーフティーな横パスが多くなる悪癖が出てしまう。日本の保持するボールはいつしかゴールに向かわなくなっていた。
韓国代表にはあった“個の突破力”と“ゴールに向かう意識”。
パスで崩せなければ、どうするか。ライバルの攻撃に、答えのひとつはあった。
低いボール保持率の彼らは、ボールを持った途端、少ない手数でゴールに向かおうとした。そのカウンターで効果を発揮したのが、個の突破力だった。多少強引でもドリブルで日本の守備を引き付けることによって、チャンスを生み出していた。この日の日本に足りなかったのは、個で打開する意識ではなかったか。ゴールに向かう意識ではなかったか。