MLB Column from WestBACK NUMBER

極私的タイトル予想 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2008/09/24 00:00

極私的タイトル予想<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

 ずっとレイズの取材に忙殺されてしまった。ついに球団創設11年目で初のプレーオフ進出を決めたのだが、気づけばもう9月下旬。不定期更新がさらに乱れてしまい、お詫びの仕様もない状況です(Number本誌を担当していたなら、とっくに首を切られているでしょうね…)。

 この間気になる話題がいくつかあり、どれにしようかと悩んでいたのも事実なのだ。そこで今回はそれらの話題を盛り込みつつ、両リーグの個人賞争いを展望したいと思う。まずはナ・リーグから。

●MVP

 この終盤に来て、一気に最有力候補にのし上がったのがライアン・ハワード選手だ。現在打撃部門の本塁打と打点でトップを走り、チームも2年連続プレーオフ進出を確実にしようとしている。やはり彼の選出が堅いところだろう。

 だが、最近面白い存在になっているのがマニー・ラミレス選手だ。ドジャースにトレードされて以降の彼の活躍は、目覚ましいものがある。最近の報道によると、移籍後の打率は4割を超え、後半戦の打撃成績はあらゆる部門でメジャー最上位にランクされているらしい。彼の加入でチームも一気に急上昇し、今やダイヤモンドバックスを突き放し地区首位に立っている。ダークホースとして注目してほしい。

●サイヤング賞

 ここは絶対的な本命がいない気がする。ここまで唯一20勝以上を挙げているブランドン・ウェブ投手がいるが、シーズン終盤になって安定さを欠き、チームも地区首位から転落してしまった。もちろんいい印象を与えていないのは確かだ。

 安定感という意味で、防御率1位に立っているティム・リンスカム投手が抜群だ。シーズン開幕から下位に低迷するジャイアンツにあって、エースとしてリーグ2位の17勝を挙げている。弱小チームに安定した投球を続けるのは決して楽なことではなく(基本的に低迷チームは「打てない」「守れない」だけに強豪チームの投手とはマウンド上のプレッシャーが確実に違うと考えるべき)、防御率の良さはかなり評価される数字だろう。

 MVPのラミレス選手同様に、トレード以降圧倒的な投球を続けていたCC・サバシア投手も面白い存在かと思われたが、ここに来て勝ち星が伸びていないのが痛い気がする。

●新人賞

 サイヤング賞以上に混戦模様だ。打者ではジョバニー・ソト捕手、ジョーイ・ボット選手、ジェイ・ブルース選手、福留孝介選手らが、そして投手ではハイル・ジャージェンズ投手が好成績を残している。

 福留選手に関しては、オールスターに選出されるなど前半戦の活躍は目覚ましかったが、後半戦の不調は明らかなマイナス要因。まず受賞は難しい状況ではないだろうか。

 チームの成績なども加味した上で考えていくと、カブスの正捕手を担い、福留選手同様オールスターにも出場、さらに新人部門では本塁打、打点でトップに立っているソト捕手が最有力と考えていいだろう。

 次にア・リーグをみていこう。

●MVP

 正直なところ、この賞だけはまったく予想がつかない。シーズン前半までなら間違いなくジョシュ・ハミルトン選手だっただろう。だが彼も後半戦はやや失速しており、影が薄くなっているような気がする。

 レッズに同行してボストンに同行した際、地元フェンウェイ・パークでダスティン・ペドロイア選手が打席に立つたびに「MVPコール」を浴びていたが、多少違和感を抱かずにはいられなかった。

 過去の受賞例をみても、突出した成績を残した場合以外、チーム成績も加味されるのでプレーオフ出場チームから選出される場合がかなり多い。そう考えるとペドロイア選手も候補の1人になるだろう。それ以外では本塁打王争いをしているカルロス・クエンティン選手、打点部門でトップに立つジャスティン・モーノー選手らが有力になってくるのだろう。いずれにしても、もう一つ物足りなさを感じてしまう。今年の投票資格者は、かなり迷うことになるだろう。

●サイヤング賞

 MVPとは反対に、もうすでにクリフ・リー投手でほぼ決まりだと思う。リンスカム投手の時に説明した通り、低迷を続けるインディアンズにいながら防御率と勝ち星でリーグ1位にいるのだから、今シーズンの投球の凄さはいうまでもないだろう。

 日本メディアの某サイトで、年間最多セーブ記録を塗り替えたフランシスコ・ロドリゲス投手が有力だとする記事を読んだが、記録達成の裏側で自身最多タイのセーブ失敗7を記録している。2003年にクローザーとして同賞を獲得したエリック・ガニエ投手は、その年セーブ失敗がゼロと抜群の安定感を誇っていただけに、ロドリゲス投手の受賞は考えにくい。あえて対抗馬をあげるならば、完投数と投球イニング数でリー投手を上回るロイ・ハラデー投手だろう(松坂大輔投手も押したいところだが、1試合当たりの投球イニング数の少なさがネックにならざるを得ない)。

●新人賞

 現時点ではレイズの4番としてプレーオフ進出の原動力になったエバン・ロンゴリア選手が大本命だろう。先日も右手首骨折から復帰し、1試合3本塁打を放つなど存在感を示した。ここまで新人部門で本塁打、打点で1位。文句なしの成績を残している。

 だが優勝争いを続けるホワイトソックスで貢献度が高いアレクセイ・ラミレス選手、レッドソックスのリードオフマンに定着したジャコビー・エルズベリー選手も目覚ましい活躍をしている。決して侮れない存在だ。

カルロス・リー
ジョバニー・ソト
ブランドン・ウェブ
ライアン・ハワード
フランシスコ・ロドリゲス
エバン・ロンゴリア
ジョシュ・ハミルトン
マニー・ラミレス
ダスティン・ペドロイア
福留孝介

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