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ボロボロになっても闘った、
岡田ジャパン“タシケントの魂”。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byNaoya Sanuki

posted2009/06/08 12:10

ボロボロになっても闘った、岡田ジャパン“タシケントの魂”。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

勝利への執念を高めるために岡田が下した命とは。

 前日会見の席で、指揮官はチームの成長を聞かれ、こう語っていた。

「たとえばチームのコンセプトである攻守の切り替えを速くするのが、10回のうち、8回が9回になるとか1つ1つあるけど、勝負に対して、チームが勝つために隙や甘さを見せないような姿勢が非常によくなってきているんじゃないか」

 タシケントに入ってからの指揮官は徹底的に「甘さ」を排除した。練習ではベルギー戦で攻撃した後の守備で戻りが遅かったために、シュートを放った後、即座に守備に切り替えることを意識づけしたり、ミーティングの題材としてスローインのサポートを提示したり。キリンカップから徹底してきた成果が、この日の結果に表れたのだ。「甘さ」を排除する作業は、「勝利への執念」を高める作業とイコールと言える。

 試合後の闘莉王は興奮を隠せないでいた。

「みんな最後のところで頑張ったので守りきれた。一番、必要なときに自分たちの力を出せた。こういうタフな試合は初めてだし、体以上のものが出たと思います。みんな、本当に気持ちが強かった」

“ドーハの悲劇” “ジョホールバルの歓喜” そして“タシケントの魂”。

 そんな闘莉王のコメントを聞きながら、岡田監督が横浜F・マリノスの監督時代、ミーティングで熱く語っていた言葉が頭をかけめぐった。

「勝ちたいという気持ちの前には、ちょっとした戦術なんて屁のツッパリにもならん」

 ロジックを得意とする指揮官ではあるが、選手に対して「勝利への執念」を植えつけるのが実に巧い。イビチャ・オシムが任期途中で倒れるというアクシデントに見舞われながら、急遽バトンを受けて世界最速でW杯出場を決めたのだから、やはり岡田の手腕は評価されるべきであろう。ただ、世界を勝ち抜くための、敏捷性を活かすという岡田ジャパンのスタイルがはっきり見えているとはまだまだ言い難いため、次のステップが重要になってくる。

 本大会のことは、もう何日か後に考えることにしよう。個人的には、歴史に残る予選突破の瞬間だったと思っている。ドーハの悲劇、マイアミの奇跡、ジョホールバルの歓喜と日本サッカー史にはいろいろあるが、この日の出来事を前例に基づいて考えてみるならば……「タシケントの魂」とでも呼びたい気がしてくるが、どうだろうか。

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