野球善哉BACK NUMBER
NPB選抜vs.大学代表の試合に見た、
ダルと斎藤の「谷間世代」の悩み。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNaoya Sanuki/Tamon Matsuzono
posted2009/11/24 12:30
プロ1年目で1軍デビューする逸材が多いが……地味。
例えば、関西には「浪速の四天王」と呼ばれた辻内崇伸(大阪桐蔭→巨人)、平田良介(大阪桐蔭→中日)、鶴直人(近大付→阪神)、岡田貴弘(履正社→オリックス)をはじめ、強肩強打の捕手・炭谷銀仁朗(登録名・銀仁朗、当時・平安→西武)、投打の怪物・片山博視(報徳学園→楽天)がいた。九州に目を移すと、剛腕・山口俊(柳ケ浦→横浜)がおり、2球団が1順目で指名をした台湾人留学生・陽仲寿(来季より陽岱鋼。福岡一高→日本ハム)もいた。左腕からの角度のあるボールで評価を得た村中恭兵(東海大甲府→ヤクルト)、細谷圭(太田市商→ロッテ)は関東屈指のスラッガー。東海NO.1右腕には木下達生(東邦→日本ハム)、「北陸のツインタワー」と呼ばれた林啓介(福井商→ロッテ)、齊藤悠葵(福井商→広島)は春・夏の甲子園で騒がれた逸材である。
「田中・斎藤世代」を迎えるまでもなく、そのひとつ上の世代には逸材が溢れているという予感はあった。プロ入団直後も、彼らの世代は決してデビューが遅いわけではなく、開幕スタメンを勝ち得た銀仁朗をはじめ、山口、平田、齊藤、木下、村中、川端慎吾(市和歌山商→ヤクルト)、岡田の7選手が1年目に一軍デビューを果たしていた。
しかし、前出の大学4年生が嘆いたように、「コレ」といった活躍までには至らなかった。「田中・斎藤世代」さらにひとつ下の中田・唐川・由規らの世代に突き上げられてきているのが現状なのだ。
スケール感に欠けるが実力派の“谷間世代”は「虎視眈眈」。
「確かに言われてみれば、コレというのはいませんね。一軍で常時出ているのは、山口と銀仁朗、齊藤くらいで、あとは社会人から入った野上亮磨(神村学園→日産自動車→西武)も同い年ですよね。僕も含めて、みんな一軍定着を、と思ってやっているんですけどね。なかなか、壁を破れていないというのが現状かもしれない」
そう語ってくれたのは、今年、1年目以来の一軍昇格を果たし、7本塁打を記録したオリックス・岡田である。初本塁打を記録する前に聞いた話だが、何より、この世代の顔になってほしい選手の一人だ。
この日の試合に出場した彼らの世代は岡田のほかに、銀仁朗、前田大和(登録名・大和、樟南→阪神)、山口の4人。クローザーを務めた山口は、それこそ大学日本代表を圧倒し来季の期待を抱かせたが、やはり目立っていたのは「田中・斎藤世代」そして、「中田世代」だった。
今思えば、高校時代は「豊作」と言われた山口・岡田らの世代は粒がそろっていたものの、スケールという部分では見劣りしていたのかもしれない。だから、田中・斎藤世代や中田世代に世間の注目を奪われたのだろう。
しかし、彼らの世代がこのまま終わってしまってほしくない。今はまだ虎が眠っているだけだと信じたい。
そして、彼らと同年代が大学を経て入団してくる来季、大卒組と切磋琢磨し、眠りから覚めた虎が牙をむいてくれることを願うばかりだ。