野球善哉BACK NUMBER
山口鉄也、松本哲也らは成功したが、
育成枠にはまだ改善の余地がある!?
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2009/12/09 13:30
今年のセ・リーグ新人王に育成選手出身の松本哲也(巨人)が輝いた。昨年の山口鉄也(巨人)に続く、育成枠からの2年連続の受賞である。そして山口は、プロ入り4年目で1億円プレイヤーになった。
新語・流行語にもノミネートされるなど、世間ではこの育成枠という制度を称賛する声が続発している。育成枠出身者が2年連続の新人王受賞となれば、そう言いたくなるのはもっともな話だし、選手を育成することの重要性を改めて教えてくれた制度といえる。育成枠を上手く活用した巨人の若手成長率が急速に伸びているのも、そうした背景が関係しているのだろう。
ただ、だからと言ってこの制度自体が成功かと決めつけるのは、まだ早計だと思う。育成選手制度にもまだまだ改善点があることは意見していかなければならない。
社会人野球の衰退を補うような制度を期待したのだが……。
2005年に始まった育成選手制度は、規約によると、
<連盟選手権試合出場可能な支配下選手登録の目的達成を目指して野球技能の錬成向上およびマナー養成等の野球活動を行うため>
と定義づけられている。
つまり、この制度はプロ野球の二軍の力にはまだ及ばない選手を鍛え上げ、育った時には支配下に登録し一人前の戦力として契約できるのだ……という解釈ができる。
その設立趣旨に関しては非常に意義のあるものだと思っている。
社会人野球が衰退の一途をたどる昨今、セ・パ各チーム70人という限られた支配下登録枠では、隠れている才能もそのまま消えてしまいかねない。アマチュアの若い才能を発掘するという面で、野球界に一石を投じた素晴らしい制度ではないだろうか。
育成選手制度が球団側の都合で変質してきている?
しかし、山口や松本の成功から、少しずつ、この制度の本来の趣旨にズレが生じてきているのではないかと思えてきた。
あるスポーツ紙記者がこんなことを話していた。
「確かこの制度が始まった当初、育成選手というのは二軍の選手に育てるための制度だったはず。この設立にかかわった方も最初はそうだといってましたけど、今はそうじゃなくなっています。確実にハードルが上がっている」