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バルサ、レアル、それぞれの監督問題。 

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鈴井智彦

鈴井智彦Tomohiko Suzui

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photograph byTomohiko Suzui

posted2005/12/14 00:00

バルサ、レアル、それぞれの監督問題。<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 ライカールト監督が風邪をこじらせて倒れた。さらには、シャビが練習中に負傷して戦線離脱する不運までもが、バルサを襲った。「1分でもいいからドイツでプレーしたい……」。シャビは今シーズンだけでなく、ワールドカップにも間に合わないかもしれない。

 それでも、12月4日に行われたビジャレアル戦でのバルサは、質の高いフットボールを披露したから驚いた。ライカールトの代わりに第2監督のテン・カテが指揮を執り、シャビのポジションにはモッタが起用された。一歩間違えばマフィアっぽいテン・カテの形相も、さすがにコチコチ。いつもならライカールトに向けて焚かれるカメラのフラッシュを浴びて、目が泳ぐ。2002−2003シーズン、オランダでNACブレダの監督をした経験があるといっても、緊張は顔に出ていた。

 「相手はフィジカルの強いチーム」だから、テン・カテはイニエスタではなくモッタをシャビの代役に選んだ。確かに、フィジカルだけでなく、ビジャレアルはラフプレイが多い。スタメンのほとんどが、南米人の集団だけはある。

 ここ4年間、バルサは一度もビジャレアルに勝てていないのも、中盤でのボール運びが機能していなかったから。なにより、リケルメとフォルランのホットラインを阻止できなかった。だから、テン・カテはリケルメを徹底的にマークさせた。エジミウソンは潰し役に徹する。2ゴールとも相手DFに当たるという幸運もあったが、中盤はバルサが完全に支配していたといっていい。

 「ビジャレアル、オサスナ、ラシンと相手によって異なったスタイルの試合になる。でも、我々はいつも同じボールポゼッションでプレーする」

 試合後のテン・カテも余裕の笑みを浮かべる。ライカールトよりも10歳は年上。試合、練習に長いこと監督は不在だが、まったく不安を感じさせない。

 GKビクトル・バルデスは言う。

 「新監督は何かしらの新しいことを持ち込まないといけない。状況としてはやさしくない。たいていは、刺激を求めて他の監督にするわけだから。テン・カテは一本気の性格だけど、彼のプレーの哲学はとても柔軟性がある。ライカールトとそれほど違いはなかった。でも、レアル・マドリーはゼロからのスタートだね」

 臨機応変に対応できているバルサに比べ、レアル・マドリーはとんでもない危機にさらされている。バルデスのいう「ゼロ」に戻った。ルシェンブルゴが解任され、アリーゴ・サッキも1月には去るという。11月、FCバルセロナとのクラシコに完敗したあたりからルシェンブルゴへの風当たりは急激に強くなった。チャンピオンズ・リーグでもリヨンに不甲斐ない引き分けを演じたことで、戦術、とくに選手交代には疑問が投げかけられた。ベッカムからバプティスタの起用法はなんなんだ、と。

 嘘かホントか、フロレンティーノ会長は続投を望んだという。こじれたのは、カマーチョのときと似たようなもので、選手との間に軋轢が生じたからと考えたからだ。ブラジル人を贔屓することで、他の選手との関係が悪化したのだと。真実はわからない。だが、そう的外れでもなさそうだ。

 ロナウドのゴールで勝利をあげたヘタフェ戦の翌日、ルシェンブルゴはレアル・マドリーから出て行った。新監督にはレアル・マドリー・カスティージャ(レアルB)の指揮官が引き継いだ。後任を探してもいるが、いまのレアル・マドリーに喜んで就任してくれる監督はそうはいない。カペッロ、ベニテス、モウリーニョ、ベンゲルといったビッククラブの監督に声をかけても、誰もがいまの状況に満足しているから返事は「ノー」だ。また、イルレタ、ビクトール・フェルナンデス、ウーゴ・サンチェスらフリーの名前もあがる。一番人気はイルレタだが、彼は元アトレティコの選手だ。

 ロイ・キーンや戦線離脱しているラウールの代わりをこの冬の移籍マーケットで獲得する可能性もあるなか、レアルの首脳陣は「ゼロ」からの建て直しとなった。以前もどこかで、こんな空気が流れた気がする。そう、3、4年前のバルサと似ている。42代目のレアル監督、ロペス・カロ42歳は、ジダンとほとんど歳が変わらない。

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