Column from Holland & Other CountriesBACK NUMBER
クライフが「死の組」をオススメする理由。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2005/12/19 00:00
ヨハン・クライフの発言は、相変わらず謎に満ちている。
「アルゼンチンと同じ組になった。それはひとつのアドバンテージである」
12月9日の抽選会の結果、2006年W杯でオランダは、アルゼンチン、コートジボワール、セルビア・モンテネグロと同じく組に入った。これは誰が見ても、死のグループである。オランダは運が悪いなあ、というのが一般の意見だろう。
それなのにクライフは「良かった」と言ってるのだ。やはりクライフは、人とは違う思考回路を持っているらしい。
さて、その理由とは?
「抽選会の前、オランダと対戦を望んでいたのはドイツのクリンスマン監督だけだった。私はその意見に賛成だった。なぜならグループリーグで出会った強豪とは、トーナメントの決勝までもう会わないということだからだ。
だから、アルゼンチンと同組は悪くない。彼らはブラジル、ドイツ、イタリアとともに、優勝候補のひとつだ。こういうチームはW杯中にどんどん強くなっていく。グループリーグのうちに、優勝候補と当たった方がいいのである」
なるほど。同じ組に入った強豪とは、もしグループリーグを突破すれば、決勝まで対戦しない仕組みになっている。それに優勝を目標にしている国は、グループリーグのうちはまだ試運転をしていることが多い。強豪と同組になれば、それだけ自分たちの決勝進出の可能性が高まるのだ。
さらにクライフは続ける。
「グループリーグなら1試合の失敗は許される。残り2試合で勝てばいいからだ。だが、トーナメントでは1度の敗戦で全てが終わってしまう。強豪と当たるなら、グループリーグがいい」
クライフの予想によれば、オランダは決勝トーナメント1回戦でメキシコかポルトガルと当たり、2回戦ではイングランドかスウェーデンと当たるという。この相手ならブラジルやドイツと当たるより、オランダが勝つ確率は高いだろう。
クライフの弟子であるオランダ代表のファンバステン監督も、同じ考えである。抽選会後のミックスゾーンに現れたとき、ファンバステンは笑っていた。
「私は強いチームとW杯の最初から当たることを全く気にしてない。もし初めから当たれば、自分たちの課題がわかるからだ。それにドイツ大会は、我々オランダに有利である。ドイツはオランダの隣国。ドイツのどこでプレーしようが、ホームのように戦える」
オランダは死のグループに入ったが、クライフもファンバステンも、そんなことに動じるタマじゃない。それどころか、優勝の自信をさらに深めているほどだ。
74年のW杯ドイツ大会で、オランダは準優勝した。88年のユーロ・ドイツ大会で、オランダは優勝した。さて2006年のW杯ドイツ大会は……。
オランダにとって、ドイツ大会は地元開催のようなものだ。いくら死のグループに入ろうが、オランダから大挙して押し寄せるファンの「声援」が加われば、何も恐れることはない。クライフが強気な発言をするわけだ。
ドイツ大会には、もうひとつの“ホスト国”があることを忘れてはいけない。