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女子短距離界のイマドキ事情。
~「福島世代」の台頭~ 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byKoji Yamazaki/PHOTO KISHIMOTO

posted2009/06/08 06:00

女子短距離界のイマドキ事情。~「福島世代」の台頭~<Number Web> photograph by Koji Yamazaki/PHOTO KISHIMOTO

女子200mの日本新記録をマークした福島。その容姿と天然キャラで人気急上昇中である

 ひとつのきっかけから、人は飛躍することがある。

 陸上トラック種目はこの春にシーズン開幕したが、短距離種目で好調が続いている。

群雄割拠の女子短距離界が今おもしろい!

 とくに目をひくのが女子である。二十歳の福島千里が4月29日の織田記念の100mで、追い風参考ながら自身のもつ日本記録(11秒36)を上回る11秒23をマーク。5月3日に静岡国際の200mで23秒14の日本新記録を作ると、6月7日に行なわれた布勢リレーカーニバルの女子100mでは、ついに11秒24の日本新記録を樹立したのである。

 福島と同級生の高橋萌木子も織田記念の100mでは11秒24。静岡国際200mでも23秒15と、両レースとも福島とわずか0.01秒差の記録を出している。200mは従来の日本記録を突破するタイムでもあった。

 渡辺真弓も、織田記念100mで11秒34。5月16、17日の東日本実業団選手権では大会新記録などで100、200mを制した。

 そして5月9日の大阪国際GPでは、4×100mリレー。一走から、福島とチームメイトの北風沙織、福島、渡辺、高橋で組み、43秒58の日本新記録をたたき出した。

 一人だけではない、複数の選手がしのぎを削っているのである。

切磋琢磨することでライバル同士が成長する。

「高橋選手と頑張っていけたらと思います」と福島が言えば、高橋は「福島選手と切磋琢磨して記録を出していきたいです」と言う。渡辺もまた、「二人に近づきたいです」と口にする。

 スポーツでは、野球の「松坂世代」という言葉に代表されるように、ある世代の選手が活躍することがある。力のある選手がそろった結果かもしれないが、一人が飛び出すと、周囲もまたそれにつられて伸びるという面も大きいように思える。

北京五輪出場を果たした福島が“夢”を“現実”にした。

 それとともに、彼女たちにとってきっかけになった、刺激になったといってよい大会がある。昨年の北京五輪である。

 北京には福島が出場している。女子100mの日本選手出場は、1952年のヘルシンキ五輪の吉川綾子以来、実に56年ぶりのことであった。それほどに女子短距離は、世界とのタイム差が大きかったし、女子短距離では日本選手は通用しないと思われてきたのだ。

 ところが昨シーズン、急成長を遂げた福島が短距離種目で五輪出場を果たしたことで、雰囲気はかわった。

 五輪出場や世界を目指すという言葉が、ただ口にするだけのものではなくなり、選手たちにとって現実の夢として捉えられるようになったのだ。

【次ページ】 世界の壁を実感した福島が女子短距離界を変える。

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