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支持率99%のスーパー・マリオ マリオ・ゴメス 

text by

安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byFAR EAST PRESS/AFLO

posted2008/04/09 00:00

支持率99%のスーパー・マリオ マリオ・ゴメス<Number Web> photograph by FAR EAST PRESS/AFLO

 舌を噛みそうな発音の苗字が多いドイツにあって、「マリオ・ゴメス」というのは誰でも簡単に覚えられて、なおかつゲームソフトの主人公を連想してしまう、親しみやすく可愛いネーミングである。この名前を初めて聞いたとき、私は「スペイン人の選手だな。いや、もしかしたらアルゼンチンかウルグアイからやって来たのかも」と勝手に納得したものだ。しかし実はドイツ国籍だったのである。地元でもゴメスがユースのドイツ代表メンバーに選ばれるまで、本気でスペイン人だと信じて疑わないファンがいたというから、名前が与える予断というのは面白いものだ。でも、あれだけの体格(189センチ、84キロ)だったら、どう見たってラテンというよりゲルマンだろう。ゴメスはハーフである。母親がドイツ人で、父親はスペイン出身。80年代に出稼ぎにやってきた父がこの国で結婚、生まれた息子なのでドイツ国籍となった。

 シュツットガルトが昨季リーグ優勝を飾ったのは若手の台頭が著しかったからであるが、なかでもゴメスの大ブレークは特筆ものだった。怪我のため全34試合のうち25試合に出場しただけだが、それでも奪ったゴールは14にのぼる。ゴールを奪った13試合のうち、負けた試合はたったの1回。つまり「ゴメスがゴールすれば(9割以上の確率で)勝てる」方程式となったのだ。

 今季も絶好調だ。ゴメスはシュツットガルトと代表チームで計27試合に出場、24ゴールを決めている。この場合も「9割」が該当する。ただし勝率ではなく、異常なほど高い得点率であるが。

 左右どちらでもシュートが打てて、ヘディングも強い。似たようなタイプにバイエルンのルカ・トニがいる。しかしトニにはリベリー、シュバインシュタイガー、アルティントップなどパスの名手が周囲にいくらでもいて、大きな体格を生かして孤軍奮闘するゴメスよりシュート態勢に持ち込む環境に恵まれている。そういったチームクオリティの面で大きな差がありながらも、得点数はトニ16でゴメスは15点なのだ。シュツットガルトの総得点は45なので、ちょうど33%を1人で稼いでいる計算となる。

 当然、ユーロ2008に向けてゴメスへの期待が高まる。先日、スポーツ誌が実施した「ユーロに出場すべきベストイレブン」のアンケート調査は、ファンの率直な気持ちを表わす結果となった。実力、人気、貢献度から判断して、バラック、クローゼ、ラームのベスト3入りが当然視されたのだが、総合1位になったのは何とゴメスだったのだ。50万人が参加したこのアンケート、実に99%がFW部門でゴメスを1位に選んだ。ちなみにFW部門の2位はクローゼ(98%)、MF部門1位はバラック(同じく99%だが票数でゴメスが勝った)、DF部門1位はラーム、GK部門1位はアドラーであった。

 間違いなくゴメスはユーロのメンバーに選ばれる。いや、選ばれなくてはならない。2月のオーストリア戦(3−0)は1点、3月のスイス戦(4−0)では2点を奪った。2試合で3点の荒稼ぎだ。これだけの選手である。ACミラン、インテル、ユベントス、チェルシー、アーセナルなどビッグクラブがゴメスの獲得を狙って動いている。ドイツ史上最高金額で移籍する噂も出ている。しかしゴメスはイタリアにもイングランドにも行かないだろう。彼がプレーしたい国、それは父の母国スペイン、それも父親の影響で「憧れのクラブ」と公言して憚らないバルセロナでしかないはずだからだ。

 ところでゴメスの背番号だが、違和感を覚えるのは私だけだろうか。シュツットガルトでは32、代表では33を付けている。ゴメスはエースFWだ。クラブでは10か11を付けて当然と思うのだが、シュツットガルトは10も11も移籍組のMFに与えている。こら、ゴメスにその番号を献上しないのか、責任者出て来い!(本当に出てきたらどうしよう……)

 謎解きの答えはゴメスの“好み”だった。彼は「3×3=9がいちばん好きな数字なんだ」と言う。32と33はたしかに「3が3つ」あって9になる。おまけに昨季の得点率は9割、今季の個人得点率も33%。そしてアンケート結果も9につながる。本人にとっては縁起の良い数字が次々と並ぶじゃないか。

 なるほど、そうだったんですね。知りませんでした。それじゃ、責任者に謝らなくちゃ。御免ス!(いちおう駄洒落です♪)

#マリオ・ゴメス

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