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プロレスと政治…愉快な共通点。 

text by

丸井乙生

丸井乙生Itsuki Marui

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photograph byTadahiko Shimazaki

posted2004/08/30 00:00

プロレスと政治…愉快な共通点。<Number Web> photograph by Tadahiko Shimazaki

 政治とプロレスは同じ。主義主張、生き方は全く違う馳浩と大仁田厚が、そう口を揃える。根回し、金、人脈が物を言う所か、はたまた豪傑と妖怪が棲む所か。いずれにしても、「あり得ない」事件が起こるのが両世界の共通項。そこで、筆者の故郷の政治を例に類似点を探索してみよう。

 本州最北端、青森県。ここ数年はまさに「あり得ない」事になっている。03年の冬季アジア大会招聘に成功したはいいが、当初予算8億円を計算し直したら56億円に膨れ上がった。県住宅供給公社の「アニータ事件」は横領された14億円の金額もさることながら、上司が8年間も気づかなかった時の流れに愕然とする。また、弘前市の武富士強盗事件では、県警は指名手配犯の特徴を「津軽弁」と発表。特定が極めて難しい情報となった。

 ある時は県営野球場建設のため、地面を掘っていたら土器が出て来た。工事が中止になると困るので、ちょっと土を被せてみた。掘ったらまた出て来た。見なかったことにしてみた。それを繰り返しているうちに、敷地全部を掘り返して隠せなくなった。野球場って広いのね。それが縄文時代最大の遺跡、三内丸山遺跡だった。

 プロレス界でも不測の事態に見舞われ過ぎて崩壊した団体に「WJ」があるが、個人で言えば大森隆男が心配だ。身長は1メートル90近い大男、30代半ばでありながらスタイルは抜群。猛禽類系のシャープな顔立ちで、世間でもトップレベルのイケメンと言っていい。全日本育ちで技術も高く、必殺技には相手の首を刈る「アックスボンバー」がある。現在はZERO-ONEを主戦場にしているが、関係者、ファンに期待されながらもトップを獲りきれない。何だかぎこちないのだ。

 独特の言語センスにも、その一端は感じられる。ノアを離脱する際、大森はライバルの秋山準へマイクで別れを告げた。「あばよ」。公共の場で「あばよ」を聞いたのは柳澤慎吾以来史上二人目だ。40代の田上明戦を控えた時には「あんなロートルには負けないよ。ロートル・・・ノートルダムのせむし男」。自問自答で名作映画劇場の世界へ行ってしまった。

 ぎこちなさを解く鍵はアックスボンバーにあった。右腕で相手の首を刈るのだが、大森は右腕を出しながら右足を前に出している。緊張している子供は右手右足、左手左足で歩いてしまう。それと一緒だ。同じ行動パターンにラリアットを出す時の中西学がいるが、最近は改善されている。

 詰まるところ、青森県も大森も、ついでに中西も「お間抜けさん」なのだ。青森県では、木村守男前知事が「政治はロマン」を標語に掲げて新政策を実施。「青森県だから青いバラを作ろう」と億単位で予算を投入したが、世界初の開発はあっさりサントリーに先を越された。下北・津軽半島を橋で結ぶ構想もあったが、果たして真冬に誰が通るのかという疑問には誰も答えてくれなかった。

 殺伐とした世の中、青森県のような愉快な地方自治体があってもいい。住んでいる人間にはたまったものではないが。格闘技界にも「お間抜けさん」は必要だろう。プロレスもまた、ロマン。

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