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【ドリーム・チーム史上最大の挑戦】 練習試合で見えた問題点とは。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2004/08/10 00:00

【ドリーム・チーム史上最大の挑戦】 練習試合で見えた問題点とは。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

 奪三振の山の中で、しっかりと本番への課題は見えてきた。アテネ五輪野球の日本代表チームは8日、キャンプを張るイタリア・パルマでセリエA選抜チームと練習試合を行なった。

 試合は松坂(西武)を先発に立てた日本が石井(ヤクルト)、上原(巨人)、安藤(阪神)、小林(ロッテ)と5投手のリレーで18三振を奪って完封。打線も1回に1安打で2点を奪うと、高橋(巨人)の3ランなど14安打で10点を挙げての圧勝となった。

「最高のスタートが切れたね。投手陣があれだけ三振をとって、良過ぎて内野の練習ができなかった」試合後の中畑ヘッドコーチからは、こんなジョークとも本音ともとれる言葉が思わず飛び出した。それもそのはずだ。一発勝負の続く本大会。何より心配なのが投手陣の調整具合だったが、この日マウンドにあがった5投手は、それぞれ持ち味を十分発揮して順調な仕上がりを見せたのだから言葉も弾むというものだ。

 だが、その好投の陰で、それぞれはしっかりと本番へのテーマを見つけ出していた。

 投手陣にとって最大のテーマは国際基準のストライクゾーンと日本で使っているボールより一回り大きな国際使用球となる。

 先発のマウンドに立った松坂は1回、いきなり149キロのストレートとボールの走りは最高だったが、国際球の感触に多少の戸惑いがあったという。

「ストレートを引っかけすぎたり、浮かしたり。スライダーも思ったより曲がったりしていましたから……」

 この国際球の特長はサイズが一回り小さいこと以外にも、ボールの縫い目が高く、皮がツルツルしているという。ボールの縫い目が高い分だけ、日本の感覚より変化球の変化は大きくなり、またストレートも指のかかり具合に微妙な違いが出てくるわけだ。

 また、2回を5奪三振に抑えた上原も、最後の6人目の打者には「三振を取りにいった」フォークが抜けてフェンスギリギリの左飛を打たれた。この1球に上原は「ボールの表面が滑って抜けてしまった」と国際球の落とし穴を見たようで「原因は分かっているので対応はします」と口にしている。

 このキャンプから代表チームは本番で使うミズノ社製の国際球を使い、できるだけ感覚に慣れるようにしている。打者からは「思ったより飛ぶ。シドニーのときとは全然違う感覚ですね」(近鉄・中村)と好評だが、やはり微妙なフィーリングが勝負の投手陣は、このボールに対する対応も大きなテーマとなることが改めてクローズアップされることになった。

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