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佐藤琢磨 グランプリに挑む Round 5 スペインGP 

text by

西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta

posted2004/05/12 00:00

佐藤琢磨 グランプリに挑む Round 5 スペインGP<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta

 「バッドラックもグッドラックも要らない。トラブルなしにレースまで行ければチャンスはありますよ。これまで4戦でまともに走れたのは開幕戦オーストラリアの第3セッションだけだったから」

 ギヤボックス・トラブルが誘発したエンジン・ブローで8位を走りながらリタイアした前戦サンマリノの2週間後、スペイン・グランプリが開かれるカタルーニャ・サーキット入りした佐藤琢磨は開口一番そう言った。

 琢磨にとってカタルーニャは、BARホンダ新車発表会に引き続いて行なわれた冬季テストランの2日目(2月3日)に、ハイブリットカー(新旧折衷マシン)で非公式ながら1分13秒696のコースレコードを出した相性のいいコース。また、前戦サンマリノでポールポジション(J.バトン)を獲ったホンダとしてはオフテストでさんざん走り込み、データ豊富なこのコースで優勝を狙っていた。

 もっとも琢磨に言わせると「ボクらばかりじゃなくライバル・チームも数え切れないくらい走り込んでますからね、それほどアドバンテージがあるわけじゃない。接戦は接戦だと思います」ということになる。

 トラブルなく走りたい……という琢磨の願いは、金曜日午後に早くも断ち切られた。クラッチが切れなくなり、まともに1周も走れなかったのだ。だが、琢磨の表情は曇っていない。

「仕方ないですよ。クラッチの電子制御系にちっちゃな虫(バグ)が入ってたみたいで、ウイングやサスペンションが壊れたとかのトラブルとは違いますから」

 土曜日からのリカバーはすばらしかった。それこそ豊富な走行データが活きたのだろう。なんと午前中最後のセッションでは、シューマッハーを0.2秒差に抑えるトップタイムを記録したのだ。'93年鈴鹿での鈴木亜久里、'94年モンツァでの片山右京は2番手まで行ったが、セッション最速というのはこれまで7人のレギュラー日本人ドライバーが誰もやれなかった快挙。

 その勢いは予選でも止まらず、今度は日本人過去最高位の3位を獲得。

「ようやくちゃんと走れました。昨日できなかったことは全部できたし、いい感じで走れたんですよ」

 五月晴れのカタルーニャの空の下、琢磨は会心の笑みを浮かべる。

 決勝はスーパースタートを決めたトゥルーリには抜かれたものの、いつもながら鋭いダッシュで予選2位のモントーヤをパスし3位キープ。

 しかしレース巧者のフェラーリ(バリチェロ)とルノー(アロンソ)チームにしてやられ、最終的には自己最高位タイの5位。多くのチームが3回ピットストップするところ、バリチェロは2回ピットストップをピタッと決め、一方ルノーはレース中のラップタイムの安定性が抜群。ルノーと較べると、琢磨のBARホンダは数周するとタイヤのグリップがガクンと落ちてしまうのだ。マシンとタイヤの相性、セッティング・データの違いである。甘い世界ではない。

「悔しい……というか、ハッピーじゃないですね。やれることはすべて、精一杯やったんですけどね」

 レース後の琢磨はもう5位では満足できなくない琢磨に“進化”していた。それはレースを追うごとに加速して行くだろう。攻め続けた、すばらしい一戦だった。

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