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何が変わるのか。今季の新車発表を見る。
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)
posted2007/01/25 00:00
新年早々から、F1の新車発表が続々と始まっている。
口火を切ったのは昨年同様トヨタで、1月12日(ドイツ・ケルン)。続いて1月14日にフェラーリ(イタリア・マラネロ)、その翌日の1月15日はマクラーレン・メルセデス(スペイン・バレンシア)、さらに1月16日には同所でBMWザウバーの新車もベールを脱いだ。
この後も1月24日にルノー、25日にホンダ、26日レッドブル……が控えており、2月に入ると2日にウイリアムズ・トヨタ、5日にスパイカーMF1と目白押し。発表会日時未定はトロロッソとスーパーアグリくらいだが、いずれにしても2月中旬までには真新しいマシンを見せてくれるはずだ。
今年の新車の特徴を一言で表わすなら“複雑な洗練”だろうか。変な言葉だが、今年は空力およびエンジンのレギュレーションが基本的に2006年と大きく変わらないために、昨年型マシンから大きく姿を変えたものは本稿執筆時点までに発表されたモデルの中には見当たらない。少なくとも、マシンの外観の基本コンセプトにドラステッィクな変化はないのだ。
しかし、マシン各部の造形は仔細に見るまでもなく、いずれのマシンも三次元的曲線を多用した実に複雑なラインで構成されている。いわば体表面のぜい肉を絞り取る洗練によって、複雑な筋肉があらわになった……そんな印象を受けるのだ。とりわけサイドポッドの形などはいずこも紆余曲折(!?)のラインを見せ、一見した後目を閉じてそれをイメージしようとしても絶対再現できないほどの形の入り組みようだ。
それにマシンの中味が相当変わったところがある。たとえば、トヨタ。
昨年のF1のエンジン・レギュレーションがそれまでの3リッターV10から2.4リッターのV8となったため、2気筒分のスペースがいわば“余って”しまった。多くのチームはその分をエンジン位置を前進させることに充てモノコック直付けとしたが、トヨタはあえてモノコックとエンジンを離し、2気筒分のスペースを結合部品でつないだ。これにはそれぞれメリットとデメリットがあったが、今年のトヨタはどうやら2気筒分のスペースを詰めて、オーソドックスなモノコックとエンジンの結合方式としたようだ。これで運動性能が向上することは間違いない。
加えて、トヨタはウイリアムズにエンジンを供給するとともに共同技術開発を進め、シフトチェンジをスムーズにし、タイムラグを抑えるシームレスト・シフト・ミッションを装備する模様。昨年が不振だっただけに、今年の復活を大いに期待したいところだ。
さて、マシンのフォルムは昨年とさほど大きく変わらぬとはいえ、それぞれの新しいカラーリングは新鮮だ。煙草スポンサーが禁止になったことでルノーなどは印象が大きく異なり、黄色いラインは残るもののフレンチブルーはメタリックのダークブルーに変えられていて、なにやら華やかさに欠けるようにも感じられる。
フェラーリは全身真紅で、ボディ各部にバーコードのような白い線が入るが、これだけでマルボロのイメージが蘇るから面白い。
面白いといえば、1月25日発表のホンダはいちばんユニークな発表会となりそうだ。この会は“テクニカル・インサイト”と銘打たれ、新車のお披露目はあるのだが、マシンはブラックにペイントされているという。真のカラーリングは2月になってからと、なにやら思わせぶりな演出と思えるが、メイン・スポンサーがいまだ謎なだけに興味が湧く。まずはマシンのフィルムを、次にカラーリングを見せるこの方法、窮余の策なのか、あるいはしたたかな計算なのか。今年、最も注目される発表会の主役がホンダなのかもしれない。