オリンピックへの道BACK NUMBER
テレビ局が煽るキャッチコピーは
選手に対する冒涜か。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakuya Sugiyama
posted2009/08/05 11:30
北京五輪で100m、200m、400mリレーすべてで、世界新記録を達成。三冠に輝いたウサイン・ボルトに、TBSがつけたキャッチコピーは「カリブの怪物」
選手の気持ちを逆なでする、無意味な視聴率至上主義。
ひるがえって、昨今のそれはどうなのだろうか。
決め方は、局によって微妙に異なるものの、たいがいはこうだ。事前の宣伝番組の開始に間に合うようにスタッフが集まって会議を開き、募集した案を議論して出場選手ぞれぞれにキャッチコピーをつけていく――。
パフォーマンスを目にしてつけるわけではないし、中継のためにどこか無理やり用意されたものになりがちだ。だから記憶に残らないし定着もしない。
無理やりひねりだしているから、面白おかしくすればよい、という発想が前面に出てきがちになる。いきおい、選手個々のプレー・スタイルや実績になじむものではなくなる。敬意のかけらも感じられないものになる。
ときに、選手本来の実力や個性を捻じ曲げかねない危険もある。
「大阪タケノコムスメ」
「走るねずみ女」
「世界最速の受付嬢」
「100万ドルで国籍を売った男」
「時をかける万能少女」
陸上にかぎらず、思いつくままに並べたが……。
それにしても、ほんとうにキャッチコピーによって視聴率は上がるものなのだろうか? 大会は盛り上がるのか?
不思議だ。