セリエA コンフィデンシャルBACK NUMBER
ミラノダービーを呼んだ4月病
――インテル失速の理由とは?
text by
酒巻陽子Yoko Sakamaki
photograph byGetty Images
posted2009/05/02 06:00
セリエAで4連覇を狙う首位インテルが4月26日、古豪ナポリに1-0で完封負けするハプニングがあった。パレルモ戦での勝利で2位に浮上したミランが首位との勝ち点差を「7」に縮めたことから、リーグ優勝の行方は“混沌”としそうである。前節まではライバルに対して無警戒を装っていたインテルだが、思わぬ逆風に動揺を隠せなかった。
“ミラノダービーが再開”
試合の翌日、イタリア各紙が挑発的な報道をしたのはワケがある。昨季の終盤戦を思い出して欲しい。第34節終了時点で2位ローマとの勝ち点差を4から6に広げたインテルはそのまま優勝へと驀進すると思われていた。ところが第36節、因縁のミラノダービーで黒星を喫すると第37節はシエナとドロー。2位ローマに勝ち点差1まで迫られて迎えた最終節。パルマとのスコアレスが続く中、カターニャにて早い時点で先制したローマに一時はタイトルを奪われる(注:最終節の54分間はローマが首位を奪回)危機まで追い詰められたものだった。7年前には最終節に首位から3位へ転落する苦いエピソードもある。
インテルを突然襲った悪夢の数々
インテルは5月を苦手とする。とりわけタイトルをかけたシーズンの終盤戦で全く勝てない。負けたらどうしようという恐れが軽率なミスを誘い、大量失点につながった。
ところが、今シーズンは暦が5月に替わる以前にインテルに悪夢が襲った。伊メディアはそれを「4月病」と呼んだ。先月5日のウディネーゼ戦では「タナボタ」勝利を得たものの、それ以後3試合で手にしたポイントは「2」と調子が全く上がらない。「4月病」の一因にイレブンの不協和音がある。アドリアーノの電撃退団、イブラヒモビッチの移籍説など不穏な空気が流れたことで、モウリーニョ監督が意図する戦略的な動きは完全に機能を失ってしまった。
一方でミランは、春になると快進撃をみせるFWインザーギの勢いに乗り、リーグでは派手なゴールショーで相手を轟沈させるなど完全に上昇ムード。ヒートアップする戦いの中には、スコアには記されないが、MFフラミニ、MFアンブロジーニなど「地味な」選手による美技が勝機を生んでいる事実がある。インテルの敗戦はミランが終盤を戦い抜く上での追い風ともなり、今のミランの勢いには文句の付けどころがない。
5月2、3日が両チームにとってのターニングポイント
勝負事に流れがあるとすれば、5月2、3日が転換点だろう。両方の残り試合の対戦カードからはミランが10日に控えているユベントス戦が正念場という見解もあるが、実際は2、3日の結果が命運を握っているような気がする。それはインテルが絶対の自信を持つホーム戦だが、相手は天敵とするラツィオであること。ミランはかつてのインテルの英雄ゼンガ率いるカターニャとの一騎打ちであるからだ。
4連覇達成の野望に燃えるセリエA王者は不意に襲った危機をラツィオ戦で是が非でも乗り越えねばならない。ナポリ戦での敗因をしっかりと消化するためにも馴染んだピッチと熱気は格好の条件ではあるが、それでも勝てないとリーグ優勝も危ぶまれる。ミランの場合、シチリアでの戦いにおける「ゼンガ」「高温」「重いピッチ」の “三重苦”を打開できるだけの勢いがなければ、逆転「V」の夢が打ち砕かれてしまう。
勝利の女神のいたずらで「空想のミラノダービー」で首位攻防を繰り広げることとなった今季。まだまだ続く因縁対決に決着をつけるのは黒字に青(インテル)か、それとも赤(ミラン)なのか? 伊の首相は奇跡の逆転優勝を信じているらしいが……。