佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER
ガッツポーズ
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)
posted2006/10/11 00:00
「イェ〜イッ!」
と言いながら、レース後のグループ・インタビューの場に現れ、珍しくガッツポーズをみせた。
沸き起こる記者団の拍手に「……といっても、ポイント取ったわけじゃないんですけどね」と、照れ笑いも見せた。
ゴール後、なかなかピット裏の記者溜まりに現れなかった。グランドスタンドの観客に手を振りながら、1コーナーに向ってどこまでも歩いていたのだ。
前戦の中国は14位でフィニッシュしながら心外かつ「怒り心頭」の「青旗無視」でレースから除外。それだけにホーム・グランプリでの15位完走はよりいっそう嬉しかったに違いない。
しかし、試走、予選終了時の佐藤琢磨はこれほど闊達さにあふれてはいなかった。
とりわけ第二次予選進出を試みた第一次予選では20位に終わり、F1のきびしさをあらためて周囲に認識させたようなかっこうだった。第一次予選を突破するには最低でも16位にならないといけないが、この鈴鹿ではミッドランドのアルバースが16位で、タイムは1分32秒221。琢磨の1分33秒666との差は1.445秒。決定的ともいえる差だ。
「2回アタックして、1回目は他車に引っかかってしまいましたが、2回目はマシンの限界性能を引き出せたと思います。もう少し速く走れたとは思いますが、ポジションは変らなかったでしょう。他のマシンとのギャップが大き過ぎました。残念です」と、琢磨。もっとも「ロングランのペースは悪くないし、レースではミッドランドとか近いライバルとはいい勝負になると思います。ブリヂストン・タイヤの調子もいいですから」と、決勝に関して悲観していない。
果たして、快晴に恵まれた決勝はスタートからフィニッシュまで安定したタイムで走り切り、ミッドランド、トロロッソを1台ずつ“食って”1周遅れながら15位完走。佐藤琢磨ファンに胸を張れるリザルトといっていいだろう。
「序盤、タンクが重い時は苦しかったですが、レースが落ち着いてからは安定して走れました。自分自身を採点できませんが、チームには100点上げられると思います」という琢磨は1分35秒〜36秒台で走行。レース中の最速ラップも17位と悪くなかった。鈴木亜久里オーナーもレース内容を高く評価した。
残るは2週間後のブラジルのみ。もう一度、第一次予選突破に挑む佐藤琢磨の姿を見たいものだ。