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出場すれば何かを起こす――。
バルセロナを勝利に導くペドロ。 

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中嶋亨

中嶋亨Toru Nakajima

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photograph byMutsu Kawamori

posted2010/02/13 08:00

出場すれば何かを起こす――。バルセロナを勝利に導くペドロ。<Number Web> photograph by Mutsu Kawamori

'10年2月8日現在、得点6(出場試合数18)とチーム内で3番目につけているペドロ。メッシと同じ年、22歳がバルセロナを牽引する

ボールを持たない時の仕事ぶりには監督も一目置く。

 ペドロが生まれ故郷のテネリフェ島の「C・Dサン・イシドロ」からバルサユースに移籍する際のエピソードがある。テネリフェ島で開催されたトーナメントでゴールを量産したペドロに、バルサのスカウトが接触した時だった。すでに3部(日本の4部)リーグに属していたトップチームで16歳のペドロをデビューさせていたサン・イシドロの監督トニー・アジャラはバルサのスカウトにこう質問した。「ペドロのどこが彼の最高の武器だと思う?」バルサのスカウトは「MFをペナルティエリア前まで上がらせる能力だ」と答えた。激しく削り合うサッカーが展開される3部リーグの中でも、ドリブルからチャンスを演出することもできていたペドロ。彼の武器をこう評価したバルサのスカウトに対し、アジャラは「間違っていない」と認め、ペドロの才能は潰されずに済むだろうと思ったという。

 またバルサユースに入り、Cチームに昇格しながらも出場機会を失っていたペドロをBチームに引き上げた現トップチーム監督グアルディオラも、同様にペドロのボールがないところでの動きを評価している。ペドロが“スペインサッカーの未来を担うドリブラー”という触れ込みでトップチームデビューを果たした時、「ボールを持って仕事をする選手は彼の他にいる」とコメントしたことからも、ペドロに対するグアルディオラの期待度は窺えるだろう。

ペドロを見れば美しいプレーとは何かを理解できるだろう。

 ボールを持った時に違いを生み出す選手が揃っているバルサにあって、ボールのないところで彼らを活かすために起用されていたペドロは今季、ボールを持っても決定的な仕事をするようになっている。昨季のバルサになかったのは、今のペドロだ。狭いスペースで力を発揮する頭の回転の速さと高い技術を兼ね備えた彼は、出場すれば何かを起こす。メッシ、イブラヒモビッチ、イニエスタ、シャビらの個人技を見るのは最高の贅沢だが、彼らがボールを持った時、ボールのないところではペドロが何かを生み出し始めている。そこでは高度でシンプルな個人戦術を見ることができる。そして、それを目の当たりにした時、美しいプレーとは何かを理解するチャンスが訪れるのだ。

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