Jリーグ観察記BACK NUMBER
日本のFWに、もっとフィジカルを。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byToshiya Kondo
posted2009/04/25 07:00
引いて守っている相手に、ゴールを決めるのには3つの方法がある――と海外でも活躍した元日本代表選手から教えてもらったことがある。
1つ目は「コンビネーションで相手を崩す」ことだ。パスをまわしてDFラインの裏を狙ってもいいし、バルセロナのようにマークを外す動作の連続でフリーの状態を作ってもいい。もちろん相手も集団で守ってくるので、そう簡単にはうまくいかないが。
2つ目は「ドリブル突破」だ。
これは個人対個人の世界だ。メッシやクリスティアーノ・ロナウドのように、スピードとフェイントを駆使してDFを1、2人抜けば、フリーでシュートを打つことができる。
ここで注目したいのは3つ目の得点法である。
3つ目は「フィジカルで局面を打開する」ことだ。相手を背負いながら、胸トラップして反転。こぼれ球の取り合いのとき、腰で相手を吹っ飛ばす。ヘディングの高さで勝つというのも、この中に入る。
183㎝のエジミウソンがみせるFWとしての強さとは?
Jリーグ第6節、柏対名古屋と浦和対京都をダブルヘッダーで観戦したとき、こういう“FWのフィジカル”こそが、Jリーグにおいて勝者と敗者を分ける分岐点になっているのではないか――そう強く感じさせられた。
名古屋のダビと浦和のエジミウソンはともに身長183cmと、高さでいえば高原直泰や李忠成とそれほど大差ない。しかし、その体幹は、比べられないほど頑丈なものがある。柏対名古屋でも、浦和対京都でも、ダビとエジミウソンはフィジカルの強さを生かして厄介な存在になり続けた。6節にダビは2得点、エジミウソンは1得点を決めることができた。
象徴的なシーンがある。
前半9分、ポンテがエジミウソンの動きを見逃さず、京都のペナルティエリアに向ってロングボールを出した。京都DF陣は2分前に同じ形でやられていたので、さすがに今度は染谷悠太がパスに反応する。しかし、エジミウソンがぐいっと体を入れたことで、ボールはブラジル人FWのものになり、シュートがネットに突き刺さった。結局ファウルとみなされてゴールは取り消されたが、この程度の接触なら、欧州では笛は吹かれなかったはず。エジミウソンが"裏に飛び出す"というコンビネーションプレーの威力を、個人の“フィジカルの強さ”で倍増させた瞬間だった。