佐藤琢磨・中嶋一貴 日本人ドライバーの戦いBACK NUMBER
開幕3戦を終えて見えてきた課題。
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)
posted2008/04/15 00:00
4月6日のバーレーンで、今季F1の開幕3戦が終了。日本F1史上初の父子グランプリ・ドライバーとなった中嶋一貴は3戦連続完走する好スタートを見せた。
緒戦オーストラリア(メルボルン)では予選14位。決勝はスタート直後に他車と接触し、フロント・ウイングにダメージを負うアクシデントなどあったが、粘り強く走って7位でチェッカー。その後、上位者の失格で繰り上がり6位となって3点をゲット。レギュラー・ドライバー昇格緒戦でのポイントは高く評価された。
「レース中盤のペースもわりかしよかったし、その点はポジティブに考えています」とレース後の中嶋一貴。
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ただし今年のメルボルンはいつになく荒れたレースで、チェッカーを受けたのはたった7台、完走8台。一貴の粘り強い走りは評価されるが、順調にレースが進んだときにどのようなリザルトを得られるか? これが早くも次の課題となった。また終盤、一貴は前にいたR・クビサ(BMW)に追突し、相手がリタイアとなっていて、次戦マレーシアでは予選10番降格のペナルティを受けた。
メルボルンから1週間後のマレーシア(セパン)では予選18位。ペナルティ加算で最後尾(22位)からのスタートとなった。両親がスタンドから観戦するなか、最終コーナーでR・バリチェロを、ストレートでS・ベッテルをオーバーテイクするシーンを見せたが、右後輪にスローパンクが発生し、不測のピットイン。燃料を多めに給油したこともあってここから「走りのリズムが狂って」しまい、他車のオイルに乗ってスピンする一幕も。2周遅れの17位でチェッカーとなった。
第3戦バーレーンは、滑り出しは絶好調だった。金曜日から土曜日午前にかけての3回の試走では6位、8位、6位とシングル。ところが、予選では16位と低迷。一貴によれば「良くなってきた路面に対応し切れなかった」のがその原因という。マシンが走り込むにつれ路面にはタイヤのゴムが付着してグリップが上がる。その分を見越して走りの限界を高めることができなかったのだ。しかも、決勝ではスタートでエンスト。2周目にはオイルに乗ってスピン! この2つのタイムロスが最後まで尾を引き、ただひとりの1回ピットストップ作戦も戦績には結びつかず、1周遅れの14位でチェッカーを受けた。
では、ヨーロッパ・シリーズに突入する中嶋一貴の課題は何か。3戦完走したことで、まず体力面での不安がないことは証明した。また、タイヤや路面の変化などを3レースにわたって経験したことは貴重である。一貴自身「だいぶ気持ちに余裕ができました」と語る。
問題は予選で、ここでチームメイトのニコ・ロズベルグに大きく離されてしまう。すなわち予選の“一発”、言い換えれば絶対速度の向上を要求されているのだ。サーキットはストレート、中高速コーナー、低速コーナーで構成されるが、予選の1ラップでいかにミスなく、自分のベストをつなげられるか。これが今後、中嶋一貴が証明しなければならないところだ。でなければ、緒戦の得点がフロックと取られかねない。
ヨーロッパ緒戦のカタルーニャ・サーキットは、テストでさんざん走り込んだコース。
4月27日のスペインGPで、もう一皮剥けた中嶋一貴のレースが見られるだろう。