MLB Column from WestBACK NUMBER

オリオールズを支えるイケイケ男 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGettyimages/AFLO

posted2005/05/09 00:00

オリオールズを支えるイケイケ男<Number Web> photograph by Gettyimages/AFLO

 ついこの間、開幕を迎えたばかりだと思っていたら、もう4月が終わってしまった。それもそのはず、野茂投手の登板をすでに5回取材していた。依然として調子自体は良さそうなのだが、残念ながら上手い具合に勝ち星につながらない状況が続いている。デビルレイズのチーム事情を考えれば仕方がないところなのだが、1日も早く日米通算200勝達成の瞬間を味わいたいと切に願っている。

 そんな中、ヤンキースとレッドソックスの2強が揃うア・リーグ東地区にあって首位を走っているのが“伏兵”オリオールズだ。皆さんもここまでの躍進を想像された方はそう多くはないのでなかろうか。

 特筆すべきは何と言ってもその打撃力だ。4月終了時点でチーム打率は.302で両リーグトップ。チーム本塁打数37本も両リーグ1位と、とにかく手がつけられないほど爆発している。元々昨年から大胆な補強で強打者をズラリと揃えていたが、今年はさらにソーサを獲得。一段と攻撃力に厚みを増していた。特に本塁打、打点の2部門でリーグトップを争うテハダの活躍が目覚ましく、米メディアからMVP級の働きと絶賛している。だがテハダ以上にオリオールズの “Go to Guy”(日本語でイケイケ男)になっているのが、4月の月間MVPを受賞した、強力打線の先陣を切るブライアン・ロバーツだろう。

 4月終了時点の成績をみると、打率(.379)、得点(21)、安打数(36)、マルチ安打試合数(11)、盗塁(10)──とすべても部門でリーグ3位以内にランクイン。リードオフマンとしては完璧に近い内容と言っていいだろう。今季のロバーツの凄さは、それだけに留まらない。何と本塁打(8)、打点(26)、塁打数(69)──でも同じく3位以内入り。“功打者”と“強打者”の二枚看板を背負って立っているのだ。

 「後ろに凄いバッターが控えているからね。とにかく先頭打者として塁に出ることだけを考えて打席に立っている」

 2001年にメジャー初昇格し、03年からレギュラーに定着。しかし過去にシーズン3割以上を記録したこともなければ、本塁打を6本以上打ったこともない。今季は“突然変異”してしまったのだ。4月29日に野茂投手と対戦した時も、1回のレフト前安打→2番モーラとの重盗成功が、野茂投手を揺さぶり結果的にテハダの3ラン本塁打を生み出し試合を決めてしまった。その後も外角低めの真っ直ぐとフォークを打ち返し計3安打。バットコントロールの良さが際立っていた。

 試合後、彼の話を聞きにロッカールームにいってビックリしたのが、170cmちょっとの身長に似つかわしくない丸太のような両腕。野球選手というより、Jrヘビー級のプロレスラー並みの体格を見て、ロバーツが生み出すパワーの源を垣間見られた気がした。

 「僕だけじゃなくチーム全体が着実に“やれる”という自信を感じ始めている。自信ほど大切なものはないからね」

 過去の成績を見る限り、今後もロバーツが現在の活躍を続けられるかはまさに藪の中だ。しかし彼がこのまま突っ走るようならば、イチロー選手の活躍に引っ張られるように快進撃を続けた2001年マリナーズのように、オリオールズも波に乗り続けることだろう。

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