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【闘将独占インタビュー】 ドゥンガ 「美しさよりも勝負強さを」
text by
竹澤哲Satoshi Takezawa
photograph byTamon Matsuzono
posted2009/09/29 11:30
ドゥンガはブラジル南部の港町、ポルトアレグレに居を構えている。待ち合わせたホテルは街中を流れるグアイバ川沿いにあり、その屋上からはヨーロッパ風の街並みが一望できた。
「あれがグレミオのスタジアムだ」とドゥンガが言ったので、「あなたが育ったインテルナシオナルはどこですか」と尋ねた。彼はうれしそうに、川の上流方向を指さした。
1週間後にワールドカップ南米予選の大一番、対アルゼンチン戦を控えていたにもかかわらず、ドゥンガはとてもリラックスしているように見えた。それは予選1位の座を守り続け、本大会出場がほぼ見えてきているという余裕から来ていたのかもしれない。
資質を疑問視する声をはねのけたドゥンガの手腕。
最初に、代表監督に就任した経緯を聞いた。
「ベスト8で敗れた'06年のワールドカップの後に、ブラジルサッカー連盟の会長から電話がかかってきたんだ。『変革と若返りが必要だから代表監督になって欲しい』と言われた。代表に対する国民の関心は高く、その責任の重さも分かっている。だが、それ以上にセレソンの監督を務めることは、私にとって大きな喜びだった。監督経験のないことを心配する声もあったけれど、多くのクラブ監督経験を積みながらも結果を出せなかった代表監督はこれまでたくさんいる。何より私はA代表として15年、U-18時代から数えれば20年間、代表選手としての経験がある。だからブラジル代表がどのような存在であるのかよく分かっていたし、誰よりもセレソンのユニフォームの重みを知っているという自負があった」
だが就任当初は、監督としての資質を疑問視する声も多かった。
「代表監督の仕事は、むしろグラウンド外での方が大変だと最初から分かっていた。負ければすぐに辞めろといわれるし、勝っても相手が弱かったからだとか、戦い方が悪いなどと酷評される。決して褒められることなどなく、絶えず批判にさらされるのが代表監督なんだ。しかし私はそのことをむしろ誇りにさえ感じている。ザガロ、パレイラ、レオン、フェリペと歴代監督がみなそうであり、私も代表監督として認識されている証でもあるからだ。歴代最強といわれる'70年の代表でさえ、ザガロ監督はモルンビーやマラカナンで激しいヤジを飛ばされていたんだ。
就任当初、私が1カ月から2カ月で辞めるだろうと言っていたものもいた。しかしすでに3年経った。それこそ私が結果を出してきたことを意味しているのではないか」