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【闘将独占インタビュー】 ドゥンガ 「美しさよりも勝負強さを」
text by
竹澤哲Satoshi Takezawa
photograph byTamon Matsuzono
posted2009/09/29 11:30
歴代代表に負けない“勝負強いセレソン”を。
'06年のワールドカップでは、前線にロナウジーニョ、ロビーニョ、カカ、アドリアーノと攻撃的な選手を4人並べ、『魔法のカルテット』と称された。当時の代表に比べると、現代表は華やかさの点で劣る印象は否めない。ドゥンガは'06年ワールドカップの失敗をどのように分析しているのか。
「それについて語るのは難しいね。内部にいた人間だけが真実を知るのであり、それを外部の人間がとやかく言うことはできない。現場にいたパレイラ監督だけが選手たちの状態を分かっていた。実際、『魔法のカルテット』は南米予選ではとてもよく機能していたから、本大会でも起用したのだろう」
『魔法のカルテット』は無くとも、現在のセレソンは強い。南米予選でパラグアイに黒星を喫して以降、17試合連続で負けておらず、今年6月のコンフェデ杯も制している。ドゥンガが監督に就任してからの戦績も、親善試合も入れると33勝4敗9分けと立派なものだ。(その後、9月9日のチリ戦にも勝ち、勝利数を35に伸ばしている)
「今では国民の多くが私を支持してくれている。私が公約に掲げた“勝負強いセレソン”が具現化してきているからだ。選手たちはよく団結し、ピッチ上ではよく走り回る。
我々は南米予選で最も多くの得点を決めている。コンフェデ杯でも得点王を我々の選手がとったし、ファウル数も最も少なかった。もはや守備的などとは言えないはずだ。人々は代表に対して美しい試合を求めるが、これまでワールドカップで優勝した歴代ブラジル代表の試合をすべて見てみるといい。ペレがいた'70年の代表でも楽に勝てたのは1試合か2試合だけで、それ以外はみんな厳しい試合だった。ただ、栄冠を手にした5つの代表は、みな勝負強さを持っていたんだ。マスコミに対して言いたいのは、新聞や雑誌をカラフルに美しく作っても、売れなければ意味がないだろうということだ。売れるためにはやはり内容が伴わなければ駄目なはずで、それは代表も同じだ。私は結果はすべて、数字によって評価すべきだと思っている」
「ブラジルには優勝以外の目標はない」。
南米予選で好調なブラジルに比べ、マラドーナが率いるアルゼンチンは苦戦を続けている。アルゼンチンがワールドカップで'86年以降優勝していないことについてどう思うか、また同国に特別な思いはないか尋ねてみた。
「その質問には答えることはできないな。優勝するためにはさまざまな要因が必要だからね。マラドーナもまだ監督に就任したばかりで、すぐに結果を出せと言うのは無理な話だろう。当然ながら私自身は、アルゼンチンに対して強くライバル意識を持っている」
選手として3度出場したワールドカップの経験は、代表を率いる上で大きく役立っているようだ。1年後の本大会への目標を聞いた。
「ブラジルには優勝以外の目標はない。他の国なら準優勝でも評価されるだろうが、'98年、フランスに敗れて準優勝に終わったときは、事故であり、最悪の成績だと言われた。今のチームはタレントも揃っているし、大きなチャンスだと思う。決勝トーナメントでアルゼンチンに敗れた'90年のチームには、カレカやミューレルなどタレントが揃っていたが、優勝するための準備ができていなかった。これまで優勝した5つのチームはしっかりと準備ができていたんだ。優勝するためには数多くの要因が揃わなければいけない。そのためにこれから大会までに準備していくことになる」
あとは幸運に恵まれることだろうか。本大会へ向けて着実に準備を進めていくドゥンガに対しては少し失礼な質問をしてしまった。それでもまじめな顔をして答えてくれた。
「幸運は勝負強いチームにしか味方してくれないのだ」
ドゥンガ
本名カルロス・カエターノ・ブレドルン・ベーリ。1963年10月31日、リオグランデ・ド・スル州生まれ。ブラジル、欧州のクラブを経て、'95年ジュビロ磐田に入団。ブラジル代表として'90、'94、'98年のW杯に出場し、'94年の優勝、'98年の準優勝に主将として貢献。'06年7月代表監督就任