サハラマラソン挑戦記BACK NUMBER
暑いし、重いし、痛いし、怖いし……。
サハラで地獄のマラソンがスタート!!
text by
松山貴史Takashi Matsuyama
photograph byTakashi Matsuyama
posted2011/04/19 06:00
「日本代表」気分でメディカルチェック待ち
いよいよスタート直前……様々なトラブルに襲われる。
レースは明後日(4月3日)からで、1日は移動、2日はメディカルチェックが行われると渡された紙に書いてあった。2日目の夜までは食事が支給されると聞いていたが、砂漠で支給される食事なんてたかが知れていると腹をくくっていた。しかし意外にも調理された料理。というよりも、料理専用ブースもできている。さすがフランスが主催国なだけある。音楽もかかっていて雰囲気は野外フェスさながら。「ここは苗場食堂なのか?」という具合だった。
食事終了後、外はまだ20時になっていないというのに真っ暗になっている。特にやることも無い上、暗すぎて何も出来ないため、皆さん寝る準備にとりかかる。星は噂以上に綺麗だ。完璧なる暗闇とはこのことだろう。東京では絶対体験できない。今日は新年度が始まる4月1日、高校の後輩もいよいよ社会人か、と感慨に耽りながら、満天の星空の下、人生初めての野外トイレを経験する。
4月2日(土)
朝食後はメディカルチェックと荷物預け。砂漠の気候は移り気だ。年によって色々な表情を見せる。寒い年もあれば暑い年もあるという(寒いといっても最高気温は40度を超えるが)。なのでベテランといえども衣類や食糧の調整をするために、背負って走る以上の荷物を持ってきて、一日砂漠生活を体験し、そこから必要な荷物を取捨選択するのである。余った荷物は預けて、ゴール時に返還される。事務局と交渉してみたが、やはりLANは貸してくれないようなので、パナソニックさんから貸していただいたタフブックは置いていくことにした。毎日更新しようと思ったが、残念だ。
メディカルチェックとは名ばかりで、基本的に書類を提出して終了。最終的に荷物は水なしで12kg。他の参加者と比べると、やや重い部類に入るが仕方ない。以後、最後の自由時間が与えられる。横のテントの中国チームは、あたかもレース中のような偽ムービーを撮っていた。さすが勢いのある国は違う。日本人選手はみんなで集まって飲み会を開いているところもあれば、ゴロゴロ寝ている人たちもいる。自分もゴロゴロしたり、朝食時に知り合ったドイツから参加しているワタルさんと話す。なんでも今大会はどこかのオリンピック代表選手やツール・ド・モンブラン2連覇のMarco Olmo選手など有名な方々も参加しているらしい。毎年なのかどうかはわからないが、やはり凄いレースだ。
しかし、ここでトラブルが発生。ゲーター(砂漠用の砂よけタイプ)をシューズから取ると、マジックテープごと取れてしまった。接着剤で応急処置はしたが、これ以上着脱を続けると、粘着力が無くなるので、取り外しせずに履けるよう手術を行う。またしても不安要素が増えた。
そうこうしているうちに、主催者パトリック氏からレースや、リタイア時の発炎筒の使い方の説明が始まる。凄まじい音を立てて上る発炎筒。これだけは使いたくないものだ……。
出場国紹介で日本紹介の際、黙祷の時間が設けられた。やはり世界中で日本のことを心配してくれているみたいだ。自分も頑張らなくては。長時間外にいたため気分が悪くなり、熱中症の疑いアリと診断される。ほとんど日陰にいるのになんてこった……明日からが思いやられる。バファリンを飲んで早めに就寝。明日はいよいよレース開始だ。