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長谷部が直面したチーム崩壊の危機。
ヴォルフスブルクは立ち直れるのか?
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ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2011/02/15 10:30
![長谷部が直面したチーム崩壊の危機。ヴォルフスブルクは立ち直れるのか?<Number Web> photograph by Getty Images](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/c/7/700/img_c70f747a4bd7c325d89f05c989a04935299575.jpg)
リトバルスキー暫定監督は、1997年ブランメル仙台で現役引退後、1999年に横浜FC初代監督に就任。その後、デュイスブルク(ドイツ)、シドニーFC、アビスパ福岡、サイパFC(イラン)、FCファドゥーツ(リヒテンシュタイン)を経て2010年6月からヴォルフスブルクのアシスタントコーチに就いていた
マクラーレン監督が強引に持ち込んだプレミアの流儀。
ピッチ外の問題もあった。マクラーレン解任後に、D・ヘーネスGMはこんなことをもらしている。
「マクラーレン監督は異なるフットボール文化をドイツに持ち込もうとして、失敗した」
マクラーレンはチームにやってくるなり、クラブにスタジアム内の改造を命じた。スタジアムに隣接するトレーニング場で練習を終えたあと、選手たちが一緒になって昼食をとるためだ。午前中だけの練習が行なわれるときはもちろん、午前と午後の2回にわたり練習が行なわれるときもスタジアムから一歩たりとも出ることは許されなかった。選手間のコミュニケーションをはかることが目的だが、窮屈に感じていた選手は少なくなかったという。
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また、ドイツ語の学習プログラムにも手を加えた。昨季まではそれぞれの選手のレベルにあった家庭教師を用意していたが、今季からはすべての選手が一堂に会して勉強するスタイルに切り替えた。選手によってドイツ語の習得レベルは異なるが、行なわれる授業はドイツ語の初級レベル。
例えばドイツ語で取材に答えられるレベルにある長谷部などが、ストレスを抱えていたことは想像に難くない。また、シーズン当初はこの授業に参加していたイギリス人のマクラーレン監督は、いつからか授業に姿を現さなくなったという。それを見て、周囲の選手はどう感じたのか。
結果的に、チームからはモラルが失われ、マクラーレンの狙いとは逆の結果がもたらされてしまった。
モラルが失われたチームで長谷部に期待されるものとは?
2月12日のハンブルガーSV戦から暫定的に指揮を執ることになったリトバルスキーは、こう宣言した。
「我々は『FCジエゴ』ではない。あらゆる面で、選手たちには厳しさを求めるつもりだ」
チームのルールを破ったジエゴには、ハンブルガーSV戦で出場停止の罰を与えることも明らかにした。
新たな監督には、今季途中までホッフェンハイムを率いていたラングニックや、かつてシャルケなどの監督を務めたステーベンスの名前が挙がっている。
ピッチの上でも、外でもモラルが失われたヴォルフスブルク。ピッチ上のモラルについては新たな監督がやってくるまで待つしかないが、それ以外の振る舞いについては選手個々の意識で今すぐにでも変わるはずだ。
件のハノーファー戦のあと、長谷部はこのように語っている。
「いろんな言い合いとか難しい部分はあると思うんですけど……ここからどう立て直していくかが大事ですね」
今季前半戦は、十分な出場機会を得られなかったが、アジアカップでチームのモラルについて訴えた彼ならば、こうした危機的な状況もチャンスに変えていけるのではないだろうか。
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