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長谷部が直面したチーム崩壊の危機。
ヴォルフスブルクは立ち直れるのか? 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byGetty Images

posted2011/02/15 10:30

長谷部が直面したチーム崩壊の危機。ヴォルフスブルクは立ち直れるのか?<Number Web> photograph by Getty Images

リトバルスキー暫定監督は、1997年ブランメル仙台で現役引退後、1999年に横浜FC初代監督に就任。その後、デュイスブルク(ドイツ)、シドニーFC、アビスパ福岡、サイパFC(イラン)、FCファドゥーツ(リヒテンシュタイン)を経て2010年6月からヴォルフスブルクのアシスタントコーチに就いていた

昨夏、リーグ最高の約40億円の補強をしたのだが……。

 マクラーレンは、イングランド代表監督としてはEURO2008の出場権を逃すという失態を演じて、その座を追われた。その後、オランダのトゥエンテの監督に就任すると、昨シーズンはリーグ優勝に導いた。その実績が買われて、昨夏にヴォルフスブルクにやってきたのだ。

 ヴォルフスブルクは、昨夏にリーグ最高となる約40億円を新戦力の獲得に費やした。今冬にもやはりリーグ最高の18億円を移籍市場で支払っている。しかし、21試合を終えて12位にくすぶっており、投資額に見合った成績は残せていない。

 昨年の秋ごろから、チーム内には明らかに不穏な空気が流れていた。チームメイトや監督の陰口を叩く選手がいた。練習ではやる気のないプレーを見せる選手もいた。初雪を記録した昨年11月には、渋滞の影響があったにせよ、多くの選手が集合時間に遅刻。練習開始が1時間も遅れたことがあった。

試行錯誤の末、結局固まらなかったフォーメーション。

 昨年最後の公式戦となったドイツ2部に属するコットブスとのドイツカップ3回戦でのこと。ホームでの試合ながら1対3といいところなく敗れると、マクラーレン監督は「ピッチの中にも、外にも問題がある」と認めている。そして、“問題”には手つかずのまま監督はチームを去ることになった。

 ピッチの中と外、それぞれに存在した問題とは何だったのか。

 まずは、ピッチ上の問題について。

 マクラーレンが理想としたのは、サイドを起点に攻撃を組み立てる4-2-3-1のフォーメーションだ。昨季までヴォルフスブルクが取り組んでいた中盤をダイヤモンド型にした4-4-2とは異なる。プレシーズンから新たな戦い方を模索していったが、最後まで定まらなかった。

 チームにはサイドでの攻防を得意とする選手が少ないのにもかかわらず、補強を施したのはフォワード、ボランチ、センターバックの選手たち。サイドを主戦場とする選手の補強は、思うように進まなかった。

 結局、開幕から3連敗を喫したことで、自らの理想をあっけなく放棄。守備を厚くした4-3-1-2へと変更を余儀なくされた。しかし、その布陣で結果を残せたのは、3試合のみ。新たな戦い方が浸透する前にメンバーを入れ替え、ピッチからは監督がやりたいサッカーは伝わってこなかった。後半戦から再び4-2-3-1に取り組んだが、機能したとは言い難い。

 監督の目指すサッカーが実現されなければ、チームの調子が悪い時に選手たちが目指すべきところもわからなくなる。チームは混乱を続けることになり、ピッチ上でのモラルは失われた。

【次ページ】 マクラーレン監督が強引に持ち込んだプレミアの流儀。

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