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2026年の新レギュレーションに“見直し派”が現れたわけ…本田宗一郎は89年の“ホンダつぶし”に「バカなやつらだ」と笑った
posted2025/04/25 11:04

89年のマクラーレン・ホンダはアラン・プロストとアイルトン・セナを擁して16戦中10勝。プロストがドライバーズタイトルを獲得した
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尾張正博Masahiro Owari
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Getty Images
来年から導入される新しいレギュレーションを巡って、F1関係者たちによる政治的な争いが勃発している。
問題となっているのは、パワーユニット(PU)に関する新しい規則だ。2026年から導入される新しいPUは、エンジンとモーターによる電力の出力比を現在の「エンジン(ICE)83%対電力(MGU-K)17%」から「50%対50%」にし、電動領域の重要性が大きく引き上げられることになっている。
ところが最近になって、一部のレース関係者から26年のPUに関するレギュレーションを見直したほうがいいのではないかという声が挙がった。その中には「100%持続可能燃料の使用が義務付けられるのであれば、自然吸気のエンジンを使ってもCO2排出量を増やすことなく、F1を続けていくことができるから、V10を復活させてもいいのではないか?」と唱える者まで現れた。
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そのため、4月11日にバーレーンで緊急会議が開かれた。参加したのは現在F1に参戦し、26年以降も参戦することになっているメルセデス、フェラーリのほか、26年からPUマニュファクチャラーとして参戦することになっているホンダ・レーシング(HRC)、レッドブル・パワートレインズ(RBPT)-フォード、アウディ、そして28年から自社製PUを投入予定のキャデラック(GM)を加えた全6社の代表だった。
見直し派の論拠
会議では26年から導入されるレギュレーションは基本的に尊重するものの、今後も継続して審議していくことが決まった。電動モーターの出力比率を上げられなくて苦しんでいるPUマニュファクチャラーたちが、レギュレーションを見直すためにさらなる話し合いを希望しているからだ。そのひとつが25年限りでホンダと袂を分かち、26年からフォードと組んで独自で開発・製造したPUを搭載することになっているRBPTだ。クリスチャン・ホーナー代表はこう弁明する。
「このままだとストレートの途中で電気エネルギーを使い切って、突然失速するようなケースが出てくるかもしれない。それは絶対に避けなければならない」
現在の方法で電気を作って使用するだけだと出力比率を50%まで上げられず、1周の途中で電力エネルギーが切れる。それを回避するために出力比率を下げてほしいというのが新レギュレーション見直し派の狙いだと考えられる。だが、現在とは異なる方法で電力を作り出す方法はすでに確立しており、それが今回のレギュレーション変更の肝となっている。