F1ピットストップBACK NUMBER
3連勝のオスカー・ピアストリがマイアミで見せた衝撃的なオーバーテイク…フェルスタッペンを自滅に誘った頭脳的アプローチとは
posted2025/05/09 11:04

マイアミGPの1コーナーで競り合うピアストリ(右)とフェルスタッペン
text by

尾張正博Masahiro Owari
photograph by
McLaren Racing
もしかすると、私たちはいま新たな時代の幕開けを見ているのかもしれない。デビュー3年目のオスカー・ピアストリ(マクラーレン)が第4戦バーレーンGP、第5戦サウジアラビアGPに続いて、5月4日に行われた第6戦マイアミGPも制して3連勝を飾り、チャンピオンシップ争いでトップを独走し始めた。
ピアストリが今年ブレイクするであろうことは予想されていた。20年にFIA F3を1年目で制したピアストリは、翌年FIA F2にステップアップするとポールポジション5回、優勝6回、表彰台11回を獲得し、選手権2位以下に60点以上の大差をつけてシリーズを制した。FIA F3(18年まではGP3)とFIA F2をともに1年目で制したのは、近年ではピアストリが3人目。前2例はシャルル・ルクレール(フェラーリ)とジョージ・ラッセル(メルセデス)といういずれもF1で成功を収めたドライバーたちだということを考えれば、ピアストリの現在の活躍はある程度は想像できていた。
デビューイヤーの屈辱を乗り越えて
F1でデビューイヤーとなった23年にピアストリが頭角をあらわすことができなかったのは、所属するマクラーレンがまだ本格的に復活する前の状態だったから。ピアストリはその年のマイアミGPでの屈辱を忘れないという。
ADVERTISEMENT
「2年前、マイアミで僕たちは最も遅いチームだった。予選では2台そろってQ1で敗退し、レースでも2周遅れになったこともあった」
その後、マクラーレンは23年後半から4年の歳月をかけて建設した新しい風洞施設を稼働させ、マシンの開発力が飛躍的に向上。レッドブルからロブ・マーシャル、フェラーリからデビッド・サンチェス(現在はアルピーヌ)といった有力なエンジニアを引き抜き、技術部門を再構築した。
こうした努力が実を結び、昨年マクラーレンはコンストラクターズ選手権を制覇した。その勢いを衰えさせることなく迎えた25年シーズンに、ピアストリがその才能を開花させることは必然だった。開幕戦こそチームメートのランド・ノリスが制したものの、その後の5戦で4勝を挙げた。