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「安納サオリ、しょうもないな」中野たむの“敗者引退マッチ”を前に、人気レスラーが明かした“危機感”「世間の声って厳しい。それでもたむは…」
posted2025/04/24 11:05

4月2日、シングルマッチを行った安納サオリと中野たむ
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
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Norihiro Hashimoto
「中野たむに対して、正直いうと怒ってた部分もあります」
そう振り返ったのは安納サオリだ。スターダムのビッグイベント・横浜アリーナ大会(4月27日)での「敗者引退マッチ」上谷沙弥vs.中野たむは、ファンばかりでなく周囲の選手たちにも大きな波紋を及ぼした。より端的に言えば、仲間たちを動揺させた。
上谷とたむの抗争はエスカレートする一方。もともと、たむがアイドル志望の上谷をプロレスに誘った“師弟関係”だからこそ感情がもつれる。3月の「敗者退団マッチ」ではたむが敗れ、混沌とした中でのマイク合戦で「敗者引退マッチ」という流れに。たむはスターダムを退団し、その後はフリーとしてリングに上がっている。
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「退団をかけることも引退をかけることも、同じユニット(コズミック・エンジェルズ=コズエン)の私たちにまったく相談がなかった。その場で、上谷とだけ向き合って決めたんです。だけど向き合う相手は上谷だけじゃないはず。そう思ってたむに対戦要求しました」
中野たむと「本気で向き合って…」
安納とたむはともにアクトレスガールズ出身。たむのデビュー戦の相手が安納だった。途中で道が分かれたものの、安納がスターダムに参戦するようになるとコズエンに加入。リーダーのたむを支えてきた。
「だからずっと横にはいたんです。でも向き合う機会が少なかった。私がデビュー10年、たむはもうすぐ9年ですけど、シングルマッチは3回しかやってない。スターダムに来てからはタッグで1回当たっただけ」
たむは今、何を考えているのか。それが知りたかった。2人の間には「頂点で会おう」という合言葉がある。若手時代に共演した舞台の台詞だ。たむが先にアクトレスガールズを退団したが、いずれ“頂点”と言える場所で再会し、対戦しようと決めていた。だが今回はその“頂点”ではなかったと安納。
「頂点で会おうという約束を果たす前に、まず本気で向き合って、ぶつからないといけない」
プロレスラー同士、闘って初めて分かるものがある。対戦する前、安納には「これが“引退ロード”になってしまうのか」という危惧もあったそうだ。
敗者引退マッチが決まってから、たむは同じアイドルグループだった神姫楽ミサと対戦。4月2日の安納とのシングルマッチを経て、6日には出身地である愛知県安城市での凱旋大会も行われた。安城大会ではコズエンのオリジナルメンバーであるウナギ・サヤカ、白川未奈との揃い踏みも実現している。
たむのキャリアを辿るようなマッチメイクを、上谷は「弱気になってるんじゃない? 引退前の思い出作りにしか見えない」と笑っていた。安納にも似たような思いがあったということだ。