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甲斐拓也「真価が問われる、常に勝ちたい」15年前、大分で唐揚げを揚げていた育成6位が新加入巨人で担う常勝軍団復活という使命 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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photograph byHiedeki Sugiyama

posted2025/04/04 10:00

甲斐拓也「真価が問われる、常に勝ちたい」15年前、大分で唐揚げを揚げていた育成6位が新加入巨人で担う常勝軍団復活という使命<Number Web> photograph by Hiedeki Sugiyama

プロ入り後14年目のシーズンで大きな決断をした甲斐。捕手として真価が問われるシーズンとなる

 背番号「130」の育成入団から3年目で支配下登録を勝ち取り、さらにホークスの厳しい競争を生き抜いて正捕手に。在籍14年でベストナイン3回、ゴールデン・グラブ賞7回、そして育成出身としては史上初となる日本シリーズMVPまで獲得した。その陰には、他の選手の何倍、何十倍もの努力と鍛錬の積み重ねがある。

「他の選手には負けたくない、この人には勝ちたいという気持ちはもちろんありました。チームでの練習は当然、練習後に寮に帰って8時、9時という時間でもご飯を食べて、その時間から練習したり……。どんなときも、どこかで必ず誰かが見てくれていると思ってやっていました。色々な方と出会い、力を借りたからこそ、ここまで来られました。縁と運がこちらに来てくれたというところもあります」

 穏やかな佇まいからは想像できないような確固たる意志と反骨心。負けることを何より嫌う妥協なき心が、甲斐のもとに縁と運、そして勝利を引き寄せてきた。その姿勢は、阿部監督が今のジャイアンツに強く求めているものでもある。

 3月27日発売の特別編集『読売巨人軍90周年+NEXT「伝説のナイン・ストーリーズ」issued by Number』では、阿部監督がロングインタビューで監督2年目の思いを明かしている。ジャイアンツの伝統を受け継ぎ、次世代のチームに指揮官が求めるのは「勝つことへの貪欲な執念」だ。司令塔としてソフトバンクや日本代表を栄光へと導いてきた甲斐が思う「勝つ組織に不可欠なもの」とは何だろう。

「色々ありますが、まずは当たり前のことを当たり前にやる、ということだと思います。143試合を戦い抜くシーズンは結構長いので、チームとして波が出てくるのは当たり前なんです。その波をいかに少なくできるか。悪い状況の時に何が必要なのかと考えると、“当たり前”をしっかりできること。ましてやジャイアンツは、たくさんのファンが見守っているわけですから、常にそれを見せられるチームではありたいなと思います」

常勝復活への司令塔の決意

 もう一つ、甲斐が重要視しているのは「組織としてのチーム力」だ。個人の技術を高めていくなかでも、チームの一員であるという芯を持って同じ方向を見ていくことが何より大切だと力説する。

「野球に関しての組織で言えば、読売ジャイアンツのトップというのは阿部監督です。監督が求めていることを、僕たち選手がいかに理解して形にできるか。『阿部監督の野球』というものを、選手が一つになってやっていくということが一番大事じゃないかなと思っています。僕もキャッチャーとして、『阿部監督の野球』を形にするという大きな責任がある。それをしっかりと最後までできるように戦っていきたいです」

 捕手は“グラウンド上の指揮官”と言われる。現役時代、その役割を全うして巨人の黄金期を築いた阿部監督から「司令塔になってほしい」という熱い言葉をかけられチームに加わった甲斐。歴戦の雄は、巨人を再び常勝軍団に押し上げるという使命に燃えている。

表紙には限定版・特別カバー装が3種あります。詳細は特設サイト「Side B with Number」でご確認ください。表紙には通常版に加え限定版・特別カバー装が3種あります。詳細は特設サイト「Side B with Number」でご確認ください。
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